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カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2011

高山忠洋が今季2勝目

最終日は、宮里優作と一歩も引かない一騎打ちも、勝因は最後の1打に尽きる。1打リードで迎えた18番パー5。スプーンを握った263ヤードの第2打は、「けっして会心ではなかった。出来でいえば80点くらい」と、それが思いがけずピン1メートル弱に絡めば、もはや勝負は決まったも同然だった。

本人さえ目を剥く見事な「イーグル締め」に、「今日は優作のほうがショットも良かった。内容も勝っていた。だけど最後は僕の気合が勝っていた」と、2打差をつけて逃げ切った。

今週は練習日の火曜日に、青木功から教わった。持病の手首痛を軽減する打ち方を毎日、陽が暮れるまで繰り返して練習した。「それが最後に出てくれた」と感謝した。

元・高校球児の高山率いる草野球チームのチームメイトは「優作とは、普段から、とっても仲良し」。しかし、こと勝負となると話は別だ。高山にはスタートから宮里が、自分の存在をあえて無視しているように感じた。「僕はプレー中に、独り言が多いので」。ペースを乱されたくない、とばかりに専属キャディの杉澤伸章さんと、1打ごとにひそひそと課題を語り合う様は、「僕は僕なりにやるよ」との、無言のメッセージを送っているように高山は感じた。

「プレー中は会話もない。こっちを“優作ワールド”に引き込もうとしている」。そう勘繰ればこそ、V争いの緊張感はいっそう増した。ギャラリーの歓声すら高山には、宮里の初優勝を願う声のほうが、多いように感じられて「おかしいな、俺はもう4勝もしてるのに」と、苦笑いで首をひねりつつ、そんな逆風も力に変えた。
「ようし、ここで自分のゴルフを印象づけよう」と、躍起になった。

V争いのときは特に、心がけている。
「どんなに自分が優位に立っても、挑戦者の気持ちを忘れない」。
17番で宮里がアプローチを寄せきれず、パーパットもまた打ち切れずにボギーを打ってもなお攻める姿勢を貫いた。
愛妻の助言も守った。

終盤の2ホールで何度か仕切り直しをしたのは、前日3日目で懲りていたから。ちょうどそばの道路を、時折ギャラリー送迎用の大型バスが走行する。エンジン音は意外と響いて「しかも、僕が打つときだけ通る気がするねん」。雨の日も、嵐の日も、1日も欠かさずプレーについて歩く内助の功は、近ごろスイングにさえダメ出しをするようになってこの日も、ぼやく夫にスタート前の念押しだ。

「ちょっとでも、バスの音が気になったら仕切り直して!」。
「いやあ、いったん取ったアドレスを外すのは、意外と体力を使うねんで」と一応は抵抗したのもプロのプライド。「ダメ、絶対そうして!」と結局、梢(こずえ)さんに約束させられ出ていった。まさに地元高知のゴルフファンに、高山の存在を知らしめた。勝負を決定づけた18番での渾身の一撃は、仲良し夫婦の共同作業でもあった。

今大会は、2年前から賞金が増額されて「誰もがいっそう目の色を変える大会にしていただいた」。主催者に感謝しきりで優勝賞金4000万円を受け取れば、石川遼を抜いて一気に賞金ランキングは2位に浮上も、その高山でさえ、もはや届かない。

いよいよ次週はツアー最終戦。その前に、裵相文(ベサンムン)の賞金王は決まってしまったが、一矢報いるチャンスはまだ残っている。
今年は開幕戦で、ツアー通算4勝目。そしてこの土壇場で、今季2勝目あげて、裵(ベ)の3勝に続く複数優勝を飾れば、来週の目標も自ずと定まる。
「勝って裵(ベ)に並ぶ」。みごと連勝で、いよいよ最後の頂上決戦も劇的に締めたい。

また、今季の獲得賞金9757万円9483円は、自身初の1億円越えまであと300万円ほど。「狙っていきたいと思います」と、この勢いで最後にもうひと暴れする気満々だ。

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