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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2011

谷口徹は「まだ勝てるというところを見せていきたい」

20代、30代は、どちらかというと、一匹狼。「誰とも一緒に行動しないし、そういうのが好きでもなかった。優勝する一瞬が好きで、そのためだけにやっていた」。

そんな谷口が、これはと思う若手に声をかけるようになったのは、40代を目前に控えたころからだったろうか。練習ラウンドや、オフ合宿に積極的に誘う。技術論はもちろん、時には辛辣な言葉で精神論も説く。
歯に衣着せぬ物言いも、慕ってくる選手が多いのは、アドバイスの数々が的を射ているから。そしてそこには愛があるから。

それで実際に結果を残した若手も多い。
武藤俊憲や松村道央、最近ではフジサンケイクラシックでツアー初優勝をあげた諸藤将次。さらにもっと若手なら、9月のANAオープンで堂々6位に入った16歳のアマチュア、伊藤誠道くんなど。

今回は2位タイと、師匠にもっとも肉薄した松村にも「俺のほんとの怖さが分かったやろう」と、胸を張る。
3日目までV争いを繰り広げながら、最終日は結局17位の諸藤には「何やってんだよ。まだまだだな」。
今週も、堂々予選突破の伊藤くんにも「プロの世界は甘くない。ジュニアの試合で勝つことを覚えて来い」と厳しく言うのは、「たった一度の勝利でちやほやされて、せっかくの才能をダメにして欲しくない」。将来を高く買っているからこそ。

「可能性があって、やる気があって、聞く耳を持っている子にしか声をかけない」と、谷口は言う。
「一緒に練習することによって、彼らも成績を出してくれたら嬉しい」とも。

自分への、相乗効果もある。飛距離が出る若手に混じって練習すれば「俺も近づこうと思って頑張れる」。
また、言ったからには自分も手本を見せないといけないという責任感。
「一人なら、練習しなくてもいいところを、朝一番に先頭切って行かないといけない」。優勝争いにしてもそうだ。
「まだ勝てるという姿を見せていきたい」という熱い思いに駆り立てられて、頑張れるというところもある。

そういう意味でも、このツアー通算17勝目は感慨もひとしおだった。弟子たちに、頭から水を浴びせかけられる手荒い祝福も「余韻に浸っていたのに目が覚めたやないか」と、照れ隠しの文句を言いながらも「今までにはなかったこと。嬉しかった」としみじみと、若手の後進にも力を注ぐようになったいまは、あえて孤独に戦っていたこれまでの通算16勝とはまた違った喜びがある。

※弟子の松村道央は2位タイに「谷口さんは、トップに立っている時も計算してショットして、マネージメントも出来てしっかり自分のゴルフをしている。一緒に優勝争いをしたかったけど、今日は勝負にならなかった。こないだは、『2年連続で松村に負けたらゴルフ辞めるわ』くらいのことを言ってましたけど、谷口さんに優勝したい気持ちが出てきたことも、感じていました」

  • 師匠に水を浴びせようと待ち構えていた松村はしかし、一度は躊躇する。手荒い祝福も、相手が相手だけに(?!)弟子たちには相当な葛藤があったようで・・・

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