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日本オープンゴルフ選手権競技 2011

河瀬賢史(かわせまさふみ)は単独2位に「ちょっと出来過ぎ」

バーディトライを惜しくも外してこの表情。「回りが見えなくなるくらい」という底抜けの集中力が難コースで奏功するか
難コースに一心不乱に立ち向かい、奪ったこの日6つのバーディだ。「ノーボギーで回れる人はいないというこのコースで、ちょっと出来過ぎ」。
4番からの3連続は、5番、6番でアイアンでのOKバーディが続いた。かわりに4つのボギーは「出入りが激しい」と苦笑い。「我慢して、我慢していたら、バーディがポンポン、ポンと来た感じ」と、この日69のゴルフを振り返った。

通算4アンダーは、単独2位にも「手応えはない」とは、師匠ばりの謙虚さだ。「遼や、勇太ほどの実力があれば、そう言っても説得力がある」。しかしまだシード権すらなく、ツアーでは4位が自己ベスト。「そんな自分が言ったところで」と、首を振る。
「でも、手応えとは別のところで自信はある」と、大きくうなずく。

結局、繰り上げ出場はならなかったが、会場で枠が空くのを待っていた2週前のコカ・コーラ東海クラシック。
練習場で、いつものように河瀬の練習を見ていた藤田寛之が言った。「良い感じで打てている」。河瀬もショートゲームには自信があるが、ショットには常に課題を抱えている。「パットの延長線上で打ってみれば」と藤田に言われた。

アドバイスをヒントに、「ああでもないこうでもない、と色々やっているうちに、はまったものがいくつかあった」。ちょうど自分でも、「これは」と思っていた矢先にもらった太鼓判に、自信がつかないわけがない。

その師匠も認める類い希なる集中力も、難コースで生きている。前日初日。河瀬がハーフターンしたころだ。午前組ですでに競技を終えて、ちょうど練習グリーンにいた藤田。すぐそばを横切る弟子に、「僕に熱い視線を送っていてくれた」とは、後から本人に聞いた話だ。

当の河瀬はまったく気付いていなかった。入り込むと、回りがまったく見えなくなる習性は、尊敬してやまない師匠すらも「まったく無視。集中しちゃってて・・・」と、申し訳なさそうに頭を掻いた。
「でもそれくらいに入り込まないと、今日みたいにピンには絡んで来ません」との言い訳も、この難コースでなら納得もさせられる。

藤田が思い焦がれるように、まだ“無印”の弟子にだって、欲はある。ゴルファー日本一決定戦は、「誰にでもちょっと違うプレッシャー。勝ちたい、という気持ちはある」。しかし、河瀬にはそれよりまずはクリアしたい目標がある。

現在賞金ランキング76位は、初シード入りまでもうひと踏ん張りだ。
「コースの攻め方と、自分のゴルフスタイルを崩さずにやることが結果につながる。一つでも上に」と、最後もやっぱり藤田ゆずりの謙虚さで、気合を入れ直した。

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