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カシオワールドオープン 2010

上田諭尉(ゆい)が、逆転のシード入り

過去にもさまざまな逆転劇が描かれてきたこのカシオワールドオープン。シード権をかけた選手たちにとっては事実上のこの最終戦で、今年も一人の選手が最終日に歓喜に浸った。

ツアー1勝の経験がある上田は、最終日に8位タイに食い込んで、「優勝争いよりも、こちらのほうがどれだけのプレッシャーがかかるか分かった」と、安堵の息を吐いた。

今大会開幕前の賞金ランキングは上位70位には圏外の72位。
「ファイナルQTに行く覚悟は出来ている。一度、地獄を見に行ってくる」と勇ましかったが、それでも極度の緊張が、最後まで消えることはなかった。

先月のブリヂストンオープンでは本当に久しぶりに、弟の崇宏さんがバッグを担いでくれた。2007年のツアー初優勝をアシストした”エースキャディ”は兄のスイングを見るなり、すかさず弱点を突いた。

「練習場ではそうでもないのにコースに出ると、テイクバックのタイミングが凄く速くなっている」。
そこを、ファイナルQTまでに直しておくように、と言われた。
「そうしたら、ファイナルQTでも通用する。ファイナルQTでも、また俺がキャディをやってあげる」とも。

するとそのあとから一気に上り調子で、とうとうこの日にこぎ着けた。

最終日は妻の愛さんの実家は広島から30人もの大応援団が。また上田の地元の岐阜県からも、大挙して駆けつけ総勢50人が、ロープの外から大声援を送ってくれた。

「プレッシャーで球が曲がったりしたけれど、寄せワン、寄せワンのゴルフでなんとかしのいだ。みんなの前で、良いプレーが出来て良かった」と、開幕前から、大きくジャンプアップの賞金ランキングは65位は、もはやファイナルQTを受験する必要もなくなって、ホッと胸をなで下ろす。

来季こそ、こんな思いはしたくない。そして、もうこれ以上、周囲を心配させたくない。
「来年は終盤のトーナメントも余裕で戦えるように、序盤から頑張りたい。ぜひ2勝目をあげて、また日本シリーズにも出たいな」。
2007年に初出場を果たして以来、ご無沙汰となっている次週の頂上決戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の再戦を、どん底のときも変わらず応援してくれた人々への恩返しとしたい。

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