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全日空オープン 1999

3位タイの合田洋

 今季の開幕戦・東建コーポレーション開催の1週間前に、急に右肩の痛みがひどくて、腕があがらなくなった。たとえば、球を投げるという簡単な動作も、腕が肩より後ろにあがらないから、へなちょこボールしか、投げられない。心配になって、東建コーポレーションのとき、イギア(ツアーに帯同している選手らのフィットネス・トレーニング用のトラック)に駆け込むと、頚椎の病気かもしれない、すぐに医者に行くようにと、トレーナーに言われた。
 肩甲骨(けんこうこつ)機能不全と診断された。筋肉が収縮して、硬直してしまう病気だ。オフのハードなトレーニングのせいだった。半年はゴルフをやめたほうがいい、とドクターストップがかかった。しかし合田は、出場をやめなかった。

 今でも痛む。痛み出すと、スイング時も、やっと肩の位置までしか腕が上がらない。動かないものを、無理に動かそうとするから、また痛む。

 患部を、冷やしながらの必死のプレーだ。「…でも、それがかえっていいのかな」。

 この日は、6バーディ、3ボギーの69でまわって、2位タイ発進。 「痛くて、ここまでしか腕があがらないけど、このへんでいいや」と、適当に上げて振り下ろすゴルフできっかけをつかんだ。

 気持ちも、入れ替わった。スイングが思うように出来ず苦しんでいたとき、普段から一緒に練習している佐藤剛平に、「かっこよくゴルフをするんじゃなく、プロはまず、スコアを出すことが仕事。形にこだわってちゃだめだ。もっと適当にやればいい。そんな青いカオしてゴルフするな」といわれ、「頭が柔らかくなった」(合田)。

 6月のJCB仙台クラシックまでは予選落ちばかりだったが、次第に調子も上向き。

「きょうのゴルフは、上出来だよ」。

 94年の日本プロ。最終日18番グリーン右手前のバンカーからパターを使う奇策で、初Vを飾ってから以後、賞金ランキングは毎年100位以下と、低迷し続けた男が、いま少しずつ、高度をあげつつある。

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