記事

カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2007

尾崎健夫「来週は、セントラルか東京よみうり」

まるでコメディのような一場面だった。後半の5番パー5。ティショットを左のクリークに打ち込んだ。しかし水は枯れて、下のコンクリートがむき出しになっていた。
さらにすぐ正面には、自分の身長ほどの石垣がそびえ立つ。
硬い地面からボールを打てば、クラブが弾かれトップする可能性があった。
「ドロップしても良かったんだけど・・・半分やけっぱち。少し右方向のフェアウェーに出せばいいと、警戒しながら打ったら、そのとおりになった」。
果たして、サンドウェッジで打ったボールは勢いよく壁に激突。

しかし、本人も予測ができた事態はここまでだった。
奇想天外な結末はこのあとだ。

前の石垣に跳ね返されたボールは、まるでピンボールのように今度は背後の石垣に当たり、最後に本人の頭上を越えて、前方のラフに着地したのだ。
3打目は、グリーンまで残り250ヤード。
そこから4番ウッドで、手前5ヤードのラフに運んだ。
4打目は、先の衝撃で「ヒールが凄い“顔”になってしまった」というサンドウェッジを再び握ってチップイン。

大ピンチから一転「おいしい」バーディは、「俺の八つ当たり人生そのもの」と、思わず苦笑いがこぼれ出た。
さらに7番でOKバーディを奪い、3アンダーの首位タイ発進に53歳が首をつないだ。

現在、賞金ランク78位はまだ圏外で、2002年以来のシード復帰にはこの最終戦が鍵を握る。
今年は誤算もあった。9月のANAオープン終了時点でランク62位につけていたことで、「今年はもう大丈夫だ」と安易な判断でそのあとシニアツアーに重きを置いてしまった。
9月のコカ・コーラ東海クラシックにも出場権があったのに、あえて同週のPGA Handa Cupフィランスロピーシニアト−ナメントに参戦。
おかげで賞金ランクは4位につけたが、そうしているうちにレギュラーの順位はあれよあれよと下がって崖っぷちに。

しかし、ジェットはジタバタしない。
「この期に及んでいい仕事をしようと思っても、出来るわけがない」とサバサバと、「今週はセントラルか、東京よみうりに行くと思ってやっている」。

セントラルとは、次週28日(水)から始まる予選会ファイナルQT会場のセントラルゴルフクラブ(茨城県)のこと。そして東京よみうりとは、やはり次週のゴルフ日本シリーズJTカップ開催コースの東京よみうりカントリークラブのこと。
つまり、そのココロは今週はいっそ優勝を狙って思い切りプレーする。それがダメなら、潔くファイナルQTに行って来季の出場権の確保に全力を尽くす・・・。
今大会で25位内に入ればシード復活の可能性も見えてくるが、「その程度の順位を狙ってやると、絶対にその順位にしかならないから」。
そんなチマチマしたゴルフは、ジェットには似合わない。
「・・・つまんないこと考えながらやったら負けるやろ?」。
ゴルフ人生のピンチにも、ニヤリと笑ってやり過ごせば、この日の5番ホールのような大どんでん返しもありうる。

    関連記事