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三井住友VISA太平洋マスターズ 2005

立山光広「勝たせたくはない」

ボギーなしのラウンドは、今年これが4度目。「コツをつかんだ」という。9月のアコムインターナショナルで、バッグを担いでくれた小島正典プロが教えてくれた。
「旗(ピンフラッグ)めがけて打つより、広いエリアを選んで打て」。

それまでは、とにかくドライバーで飛ばして、ショートアイアンであわよくばチップイン「・・・なんて。楽することばっかり考えていた」が、それだとミスをしたときの怪我も大きい。

「この年になって、ようやくディフェンスのゴルフを覚えたんです」と、苦笑する。

そんな戦略に加え「世界一のグリーンは、長尺でちょこっと触るだけでいいから」と、前日2日目に35インチのパターから持ち替えた、長尺がハマった。
超・高速グリーンにもうまく対応してチャンスをねじこみ、優勝争いに名乗りを上げた。

外見は、ちょっとこわもて。
それでいて面倒見がよく、親分肌なところから“番長”と呼ばれ慕われているが、最近では川原希や今井克宗ら後輩たちに心配される側にいた。

現在、賞金ランク69位。来季のシード権を確保するボーダーライン(同ランク70位)上に立たされて、気も沈みがちだった。

いつもは、ショッキングピンクのパンツとか、花柄のポロシャツとか。
パっと目を引くド派手なウェアを売りにしていたが、「このごろは、気分も乗らなくて・・・」。
この日も「成績が良くないのに、目立つのは恥ずかしい」と、黒のパンツに茶系のボーダー。
冷え込んできた午後からは、黒いセーターを着込み、グっとシックないでたちで「こっそりとプレーしていた」という。

しかし、本人も思いがけず会心のゴルフで単独2位まで駆け上がると、「・・・今日はしびれちゃったよ」。“番長”の名に似つかわしくない、ちょっぴり弱気な発言もポツリ。

最終日最終組は、初めての経験だ。
「今日は6アンダーで貯金もあるから、明日は5オーバーでもいいかな」と、殊勝なことを言っているが本音は違う。

標的は、ダレン・クラーク。
「仲間とも、話してた。“勝たせたくはないな”って」。
連日、チェック柄の派手なパンツで現われるクラークに対抗して「明日は俺も、色で競おうかな」と、最終日はいつもの“コスチューム”復活も匂わせた立山。
クラークの連覇を阻止し、初優勝をつかむ。

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