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キヤノンオープン 2011

立山光広は「ひとつ言っとくと」

最後は、3メートルのバーディパットを沈めて通算11アンダーで上がってくるなり、いったんは練習場に足が向いた。その立山を、スタッフが制した。

クラブハウス前で行われているキヤノンの「チャリティフォト撮影会」。参加費1000円は、すべて地元横浜市の福祉協議会に寄付されるイベントに、立山も制限人数一杯の10人の予約が入っていた。

「みなさん、お待ちなので!」と説得されて思わずつぶやく。
「今すぐにも練習したい。俺がこんな気持ちになるなんて、1年に何回もないんだよ!」。
こわもてで、ボヤキながらも列をなす希望者のみなさんに冗談を言ったり、小さい子を抱っこしてあやしてみせたり、本当は優しい一面を覗かせて、ファンを喜ばせた。

先週まで絶好調だったティショット。「なんでか今週になって、ちっともフェアウェイに行かない。ドライバーが真っ直ぐいかないと、ゴルフやってて面白くない」。
そして改めて「ゴルフって不思議」と思うのは、それでも優勝争いが出来ること。
「調子良くてもスコアが悪くて、調子悪くてスコアが良いって・・・。一体何なんだろ?!」。

賞金ランキングはいま、ようやく1000万円を超えて59位。3年連続10回目のシード権の保持はいま正念場だが、43歳を迎えた“番長”のこだわりはそこではない。確保に失敗すれば、出場権をかけた予選会のクォリファイングトーナメント(QT)に行かざるを得ないがそれすらも「ウェルカム」と、怖れない。
「この年になったら、しょうがない。俺はどこにだって行くつもりだよ」と、覚悟の上だ。

最終日にこだわるとすれば、「そりゃやっぱり、ドライバー。みっともないプレーはしたくない」などと喋りながらやってきた練習場で、「ひとつだけ言っとく」とふいに切り出した。

「明日は、遼が首位ならチャンスないけど、マモが首位なら俺にも十分チャンスある」。そう言ったときにはまだその小山内が、17番のトラブルで石川に並ばれたことを知らなかった。「えっ、マモがトリ(プルボギー)を打ったの?」と、聞き直したまさにその瞬間に、今度は練習場のすぐ右前の林を超えて、ひとつボールが飛んできた。

隣の18番ホールは、いままさに最終組がプレーをしている時間で「誰かOBだよ。まさか遼じゃないだろね」との、立山の憶測は当たっていた。
さらにその石川も、小山内さえも最後に揃ってダブルボギーを打って、思いがけず立山自身も首位に加われば当初の目算も、大きく変わってくる。

最終日は石川と、久保谷と最終組で回ることになった。この顔合わせに思い出されるのは2007年。石川が史上最年少優勝を達成したときと全く同じ組合せには本人も、あの二の舞は演じたくないはずだが。

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