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”曲げない2強”の戦い勃発! 来季ジャパンゴルフツアーもお楽しみに
記録はいつか途切れる。わかっていても、人々は都度ざわつく。渦中の本人も周囲の無念を感じ取っていた。
部門別表彰で、表彰された際にも受賞スピーチで苦笑と共に、つい本音が出た。
「ちょっと…気まずいです」。
曲げない男に強烈なライバルが出現した。
歴史が動いた。
勝亦悠斗(かつまた・ゆうと)が、10季連続がかかっていた稲森佑貴(いなもり・ゆうき)を阻止して、今季のフェアウェイキープで1位を奪った。

実現すれば同賞を「稲森賞」に改名しようかという案まで出ていたことを、勝亦も知っている。
「彼もたぶん、すごい狙っていたと思います」。
特に思いを感じたのはシーズンも後半戦に差し掛かったころだった。
「きょう何回行った?って聞きあうようになった」という。
周囲の注目も一気に集まり、試合が終わるごとに経過報告をしてくれる人もいた。
「ついに抜いた」と、知らせを受けたのは11月の「ACNゴルフチャンピオンシップ」だ。
逆転1位につくと、じわじわと稲森を引き離していった。
いよいよ2人の“最終戦”「カシオワールドオープン」では予選2ラウンドで直接対決が実現した。
2日間とも朝の選手コールで「フェアウェイキープの1位と2位…」と呼び出しされて、そのたびに2人で顔を見合わせ苦笑い。
「打ちづらいね…」。
同時に勝亦は、稲森のスゴさを感じていた。
「稲森選手はこのプレッシャーを9年(季)も続けてきたんだな、と。本当に凄い」。
並大抵の大記録ではない、と改めて実感したという。
79.283の勝亦に対して、稲森は77.832%だった。
3位の片岡尚之(かたおか・なおゆき)が65.934%だから、どちらが戴冠していても、脅威の数値に違いない。
でも、かつてない不振を抱えていた稲森は“最終戦”を戦うまでもなく、「今年の曲げない男は勝亦」と、悟っていたそうだ。
「そもそも1%以上も離されていたわけですから。仮に僕が100%を続けても、逆転は難しかった」。
加えて最終戦の同組で、勝亦のゴルフを目の当たりにしたことで、「後ろから刺される気持ち悪さが初めて分かった」と、さすがの9季連続曲げない男も降参した。
「僕も、稲森選手と一緒でそこまで距離が出るわけではないので。フェアウェイをキープしなきゃ、というよりは、どっちのラフなら怪我が少ないかと考えるようにしていて。それに対するターゲットの取り方が、今年はうまくいったのかな…」と“勝因”を語った勝亦。
「自分のプレースタイルにも自信がつきますし、1位になれたのは嬉しいですけど、肝心の賞金シードは獲れなかった(賞金93位)。来年は、賞金シードにプラス、フェアウェイキープで連覇ができれば最高ですね」。
昨季、稲森が樹立した、前人未到のフェアウェイキープ80%台(80.957%)の到達にも今年はあと一歩で及ばなかった。
「来年は80%を狙いたい」と“稲森越え”にも意欲的。
「来年も、稲森選手と僕が1位を争う図は変わらないのかな、と。最終戦が終わった時にもそんな話をしましたので。これからも互いに高め合っていけたらいいな、と思います」。
ライバルの存在がいっそう向上心を高めてくれる。
役者が増えればゴルフはもっと面白くなる。
記録はいつか途絶えるものだが、同時にまた新たな記録が生まれるという合図でもある。
稲森も、「また続けて獲れるようなことがあったら嬉しいですね」と、言った。
曲げない2強の戦いが勃発した。
来季のジャパンゴルフツアーもお楽しみに!













