今年も、賞金王不在の式典となった。
金子駆大（かねこ・こうた）は早朝、今週のPGAツアー最終予選会に向けて出発したため、すでに機上の人だった。

賞金ランキング賞ほか、パーキープ率賞とゴルフ記者賞の3冠を受賞した金子の代わりに母親の久美さんが登壇したが、久美さんが本イベントの詳細を知ったのは先週の金曜夜。

「最近、駆大（こうた）は全然私に話をしてくれないんです」と、久美さん。

聞いていれば、先週はその心づもりをして自宅を出てきたのに。
おかげでこの2日で、東京と名古屋の自宅を二往復。「なんだか今年はあの子に振り回されてばかりです」と、苦笑した。

手塩にかけて育てた。
久美さんも、久美さんのお母さんも、ゴルフが大好きだった。その影響で、3歳ごろにはもうプラスチックのクラブがおもちゃ代わり。

器用にスイングしながら歩行器を乗り回し、テレビも興味を示すのは、子ども番組よりタイガー・ウッズのプレー。

本人のゴルフ熱が高まるとともに、つらい思いをした時期もあったが、母子で乗り越えジュニア期には一目置かれる存在に成長していった。

息子を支えていく上で久美さんが、特に力を入れたのが「食べ物と、睡眠と、居心地のいい空間」だ。
特にプロ転向後は食材をすべて100％無添加で統一し、肉や卵も、遺伝子組み換えでない餌を食べているものに厳選。

外食が増えた息子のために、休日は鳥鍋や豚しゃぶなど、効率よく栄養が取れるメニューをと工夫を凝らす。

中でも免疫力アップ効果があるといわれる韓国料理のタッカンマリは、久美さんの自信作だ。
金子のプロ仲間にふるまうこともあり、誰もがその美味をべた褒めする。

遠征時の往復は可能な限り久美さんがハンドルを握るようにして、効率よく睡眠時間を確保してきた。

「流すときに飛び散る水も、皮膚から吸収されてしまうらしいですよ」と、久美さん。
自宅の水回りは、トイレにも塩素除去フィルターを装着する徹底ぶりだ。

こんなに尽くしても、息子というものはつれないもの。
「最近はよほどでない限りママ、と呼ばれなくなりました」。仲間内では「久美、きょう来てた？」などと、呼び捨てにしているようだ。

それでも、今年は外で母親や、お世話になってる人たちへの感謝を口にする場面が増えた。
きのうの最終日も特に言葉もなくいったん解散したが、名古屋への帰路、新幹線でラインが震えた。