難条件で知られる本大会には、誰かが何かしら遺恨を残しているのではないか。
米澤も昨年は、最終日を5位タイから出て1打足りずに岩田と石川のプレーオフに進めず、一昨年は、初日に大学先輩の金谷拓実(かなや・たくみ)と首位に立ったが、最後は7位に終わっている。
ただ、大学4年の21年にアマで初出場した際も、26位の結果を残しており、出場3戦で、すべて予選を突破。
本人も「相性がいい、と思いながら毎年プレーしている」という通りに、風が吹いた2日目もまた「67」でまとめて暫定首位の通算6アンダーでお昼すぎにプレーを終えると、その後は一度も抜かれることなく2日目を終えた。
「最近は伸ばし合いでも上位に入れるようになってきて。どちらでも対応できる」と自負するが、「最終的にはタフなコースのほうが好き」と、プレースタイルも、宍戸向き。
「難しいホールでは、状況によってピンに打たない。ティショットはそもそもドライバーで行かない。でもそれは守りではなくて、グリーンの真ん中に向かってしっかり攻めている。そこは一貫している」と、信じたマネジメントを頑固にやり抜く。
しぶとく拾い続けるゴルフを支えるのはやっぱり小技。
「難しいコースだと、フェアウェイやグリーンを外す回数も増えてくると思うので、ショートゲームでどこまで切り抜けられるか」。
ゴルフを始めたころから、「楽しく感じていた」と、今も練習の7割は、小技の時間に割き「何より一番、練習していると思います」と、この日は左に落とした3番パー3も、1.5メートルに寄せてパーセーブ。
難しい宍戸で、ボギーはまだ3個。
「ゴルフを始めたころから、あまり環境に恵まれないところで練習してきましたので。我慢は得意」。
雪国の地元岩手で培われたメンタルは、筋金入りだ。
昨年の4月の「中日クラウンズ」で初出場を飾り、8月の「横浜ミナト Championship ~Fujiki Centennial~」で2勝目を挙げて以降は「毎週、優勝しか狙っていなかった。初日からギア全開。それでガス欠になることが多かった」と後半に5試合連続で予選敗退した時期もあったが、「…まだ金曜日でしょ?」。
今季から本格タッグのキャディさんが上手にガス抜き。歴25余年で、男女合わせて18勝を導いたゲーリーさんは、2006年の本大会で髙橋竜彦(たかはし・たつひこ)の通算2勝目を支えた宍戸のVキャディでもある。
現在は、コースセッティングアドバイザーとして大会を裏方で支える髙橋が、2人の隣で当時を回顧。
「あのとき18番で4打差あったんだけど、それでもゲーリーは、グリーンの真ん中狙え、って」。
コースはもちろん、ゲームの駆け引きも知り尽くすが、「僕はただバッグを運んでいるだけ。ヤマト(運輸)よ」などと、カタコト言葉で選手を笑わせ、「蓮(レン)は我慢強いし努力もすごいし、英語も僕よりうまい」。
選手を乗せるのも、力を抜かせるのもとても上手だ。
「特にこういうコースって、ギリギリのところでやってるし、怒るしストレスもたまるし。たまに考えすぎることも当然あるけど、彼みたいなキャラクターの人が隣にいると、多少心拍数があがっても、ちょっと話して笑うと落ち着ける。それがすごく気に入ってる」と、米澤も全幅の信頼を置く。
髙橋によると、ゲーリーさんは初タッグ⇒初Vも多いらしく、「運も持ってる」。
宍戸を歩くのに、これ以上の相棒はいない。