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日本プロゴルフ選手権大会 2025

清水大成を支えた岩田寛の言葉と金谷の存在

清水大成(しみず・たいせい)が5年シードのタイトル戦で、プロ5季目の初優勝を達成した。

待望の大器がやっと勝った。



「自分でもぜったい泣く、と思ってました」。
でも、なぜか涙は出なかった。

プレーオフ4ホール目に、奥2.5メートルのチャンスを逃してのパー決着。
「バーディで終われれば、泣いていたかも」。
その瞬間は、喜びより外した悔しさがまさった。

跳ね返され続けた初Vの壁。
「泣くよりも、やっと勝てたとほっとしました」。
感泣より安堵が勝った。
大量の水シャワーも笑顔で浴びた。



日大時からよく飛ばし、プロの試合でV争い。
「大成(たいせい)のポテンシャルならいつでも勝てる」と、言われ続けた。

プロ転向はコロナ禍の2020年。特別QTで6位につけ、優先順位は低かったが少ないチャンスですぐ初シードをモノにした。

飛距離だけでなく、昨季はパーオン率と平均パットでも1位になった。
今までチャンスはいくらもあった。
でも、勝てない。
「いつも自らピンチにしてしまう。きょうもまたか、と」。

2打差の単独トップで迎えた16番では右の山の上から打った2打目を奥にOB。
ダブルボギーを叩いた。

17番のパー3では右バンカーに入れてボギーとし、生源寺の逆転を許した。
18番のバーディでプレーオフには臨んでも、1ホール目のティショットは今度、右のがけ下。

球は運よく見つかったがボールは背の高い雑草にもぐって見えない。
「また負けるのか」。



過去のV争いで、一番悔やんだ1戦は昨年11月の「カシオワールドオープン」だ。

3日目の7番で紛失2回の+5。1ホールで「10」叩き、それでも1差の3位で最終日に臨み、後半トップに立ったが、最後は岩田寛(いわた・ひろし)に1差で負けた。
岩田に祝意を伝えてロッカールームに戻ると涙が出た。トレーナーの堀川さんと、沖田キャディも一緒に泣いた。それを見ていた岩田も「泣きそうだった」と、当時のV会見でも語っている。


もらい泣きを恐れた岩田が、あとで自身のトレーナーの金田さんを通じて清水に届けたメッセージが「大成はこれからぜったい強くなる。必ず優勝できる」。

それがどれほど響いたか。


去年のカシオ。このあと3人で号泣しました


「そう思ってもらえる自分に誇りを持とう、と思えた。優勝は遠くて苦しかったけど、こんなことでくじけちゃダメ、と」。
通算7勝のうち、日本タイトルを含む5勝を40代で飾っている大先輩が教えてくれた諦めない心。

岩田の言葉を支えにメゲずに誓った初Vを、5年シードのタイトル戦で飾った。
「今まではモードに入りすぎていて、ダブルボギーを打った時もやばい、という思いしかなかったですが、今回はしっかり2ホール消化しようと切り替えがうまくなった」と本戦も、プレーオフでも、何度ピンチに見舞われてもくじけずにやり遂げた。
「人生の大きな一歩になりました」と、喜びもひとしおだ。


プレーオフ1ホール目でいきなり窮地も脱出してパーセーブ。初Vにつなげました


一番苦しい時に、ロッカールームで一緒に泣いてくれた2人が今度は自分のかわりに嬉し泣きしている。

2年前に脱サラを決意し、清水と共に歩くと言ってくれた沖田キャディは日大同期。
「いい時も悪いときも、いつも落ち着いていて、僕を助けてくれる」と、感謝。

堀川トレーナーは献身ケアと共に「いつもかけてくれる言葉が優しくて。僕を息子みたいに思ってくれる。2人にありがとうと伝えたい」と、心がこもった。


堀川トレーナーと沖田キャディにも心から感謝


今年は3人で「賞金王を目指そう」と、話しているそうだ。
昨年は、同学年の金谷拓実(かなや・たくみ)に先を越されて焦りもあった。
「僕の予定では、もうアメリカにも行っていたかったですけど、うまくいかないですね」。

すでに憧れのPGAツアーで戦う金谷を思い、「追いつけ、追い越せ、という気持ちです」という清水。
ここから一気に大成する。

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