記事

東建ホームメイトカップ 2023

石川遼が、諸行無常のV争い

4打差の大量リードで3日目を出たレフティの細野勇策(ほその・ゆうさく)が、7番のボギーを契機に前半上がりの3ホールで大きく崩れた。

たちまち大混戦で、7打差の5位タイから出た石川遼が、1イーグル、6バーディ、3ボギーで回り、2日連続の「66」を記録。

首位に躍り出た。


序盤は足に伝わるグリーンの感覚と、実際の速さに攻めあぐねた部分もあったそうだが、7番で2メートルを沈めてやっとスコアを動かし9番では3メートルを沈めてバーディ。


前半2アンダーでターンをすると、後半9ホールのパーセーブは1メートルを逃した16番だけと、なんともにぎやか。

11、13番でボギーも、12番ではドライバーで約350ヤードも距離を稼いで奥から8メートルを沈めてイーグルを奪った。

14、15番ではいずれもチャンスを逃さず、17番のパー5は奥ラフから巧みに寄せてバーディ。


単独トップで迎えた18番は、手前ラフから打ちすぎのボギー締めになったが、2日続けて1日5アンダーで回り、「コツコツと積み重ねてきたものが、数字につながっているというのは素直にすごく嬉しい」と、オフの成果を喜んだ。


通算14アンダーの首位で並んだ星野陸也と、2015年優勝のマイケル・ヘンドリー(豪)とのペアリング。
「順位より、誰と最終日最終組を回れるかのほうが楽しみ。おのおのストーリーがありながらの最後の18ホール。この人と回って楽しいなという人と回れるのはこれ以上ない喜び」と、歓迎する。


3日目に、最終組のひとつ前で回った田中裕基(たなか・ひろき)は、2017年から石川が主催を始めたジュニア試合の一期生で、中学~大学生と、幅広い選手層に交じって上位争いしたことで、石川の目にとまった逸材の一人という。

「順調に成長していて微笑ましい」と、教え子との3日目のV争いも満喫した。

「この舞台でビッグスコアを出して予選を通過し、きょうも前半ボギーになりそうなところを何回も何回もパーで耐えてた」と喝采を送り「土日のプレーが今後につながっていく。頑張って」と、激励しながら自ら背中で見せた。



「まだ、今年は3日間しかたってないので。体力的には一番あるはずなんですけど疲労もありますし、改めて4日間の戦いが始まったなという感じ」という31歳の開幕戦で、自身33回目の最終日最終組に入った。

過去32回で14勝を飾る一方で、今大会での3回とも敗退。
過去データで初の開幕戦V率を換算するのは簡単だが、「明日の最後のほうでやっとメンバーがなんとなく決まってくる感じと思う」と、エンディングはまだ見えないし、事前には描けない。


「作家ではないので…」と苦笑しながら、「ほんとに、自分ができることを、コントロールできる範囲内でやっていくしかない。明日は明日の調子もありますし、それも見極めながら」と、柔軟に挑む。


それでいて、泰然自若に。
「ピンポジションも、天気も、体の調子も変わる。全ては諸行無常じゃないですけど、物事は常に変化していて、細かい変化は受け入れながら。ボヤッとでもいいので、根幹となる部分はどっしりと。動いていないことが大切です」。
勝ち方は、状況や性格や、年齢によっても当然変わる。その中で、一貫したいものもある。

史上最年少Vを皮切りに、数々のドラマや伝説や、感動を生んできた男が、ツアー通算19勝目で今度はどんなストーリーを描くのか。
30回大会を迎える記念の開幕戦を、遼イズムで満開にする。

関連記事