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日本プロゴルフ選手権大会 2019

1日遅れの開幕決定

予定から1日遅れの5日金曜日に第1ラウンドを行うことが、正式に決まった。大会主催の公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA)の倉本昌弘・会長が、4日木曜日の16時に発表した。
6日土曜日には第2ラウンド。終了時に上位60位タイの予選カットを行い、7日日曜日に1日36ホールを回って勝者を決める予定だが、万一ずれ込めば、8日月曜日の予備日の使用も検討される。あくまでも、72ホールの完結を目指して開催される。

苦渋の決断だったと思う。
大会の実施に関しては、県内全域に避難勧告が出されたときから各方面で、様々な意見が飛び交っていた。
「今週このような状況で、開催をするのかという批判があることも、理解しております。そのようなことも含めて考えた上での決断と、理解していただければ」。倉本会長は、神妙な顔で言った。

その年のプロ日本一を決めるタイトル戦は、毎年コースを変えて各地の名門が選定される。数年も前から準備に準備を重ね、当地のゴルフファンの期待も半端ではない。まして、ここ鹿児島県で、男子ゴルフが行われるのは15年ぶりである。

「この近くで被害が起きたということであれば、即刻やめるべきだと私も思います」。しかし主に被害が出ているのは、ここから十数キロ離れた鹿児島市内であり、当地の指宿市には確かにその報告は入っていない。
「どこを基準に判断するのか。いろんな考えがあるが、ぜひ開催して欲しいと言ってくれる人もいる。開催コースも含めて準備をしてきた人たちや、観戦に行きたいと言ってくれている人たち。その人たちのことを考えると、我々に止めるという判断は今のところないです」。

倉本会長の決断を、複雑な思いで聞いたのが石川だった。
「避難勧告が出ている状態で、大会を開催するのはどうなのか」。
たとえ、指宿市内に大きな被害はなくとも、市外から来てくださるボランティアのみなさんや、ギャラリーのみなさんの安全確保はどうするか。
「命に関わることですし、行政や気象庁が発表している避難勧告も意味がなかったとなると…」。他の選手たちからも、そんな意見が多く出されたという。

しかし倉本会長率いるPGAが主催する今週は、普段は我々一般社団法人日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主管するレギュラーツアとは少し勝手が違う。昨季から、石川遼が選手会長として引っ張る選手会は、レギュラーツアーに出場権を持つプロたちで構成され、「JGTOの試合だったら、選手会として何かということはできますが今回に関しては、あくまで一個人として話をさせていただいた」。

倉本会長には他の選手の意見もまとめて、直に思いを伝えたという。
「関係者のみなさんは、この1週間のために準備をされてきた。試合をやりたいという気持ちも理解できるが、命に勝るものはないと、僕は思ったので。それは率直に伝えさせていただいた」。
主催者の思いを尊重しながら選手会長として、出場選手やボランティア、ギャラリーのみなさんなど地元の方々の安全にも懸命に心を砕いた。

ここいぶすきゴルフクラブはタイガー・ウッズが、初めて日本ツアーで回ったコースでもある(98年カシオワールドオープン)。
「そういうところで僕もやれることを、本当に楽しみにしていた。毎年いろんな地域を回っている中で、一番楽しみにしているトーナメントでもありますし、僕もやりたくてしょうがないという思いは強かった」。
選手会長は、いち選手としての自身の思いとも、懸命に戦っていた。

緊急時のギャラリーへのクラブハウスの解放など、安全確保も含めて倉本会長が、1日遅れの大会の開催決定を発表した直後に、当地の指宿市内のすべての避難勧告の解除が、行政から発表された。
改めて5日金曜日に始まる第1ラウンドを石川は、昨年覇者の谷口徹と倉本会長と10番ホールの7時40分から出ることになった。
「どの大会でも安全無事に終われることが一番」。
見上げる開聞岳(かいもんだけ)に願いをこめて、ティオフする。

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