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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2016

伊澤利光が「時松くんのゴルフに学んだ」

3年8ヶ月ぶりのツアーで、伊澤が感心したのは時松(右)のゴルフ
ツアー通算16勝。01年と03年に2度の賞金王が、22歳の“新人”のゴルフをして「勉強になった」と言った。予選2日間を共に回った尾崎直道は、還暦を迎えたばかりのベテランのゴルフに「粘り強さはやはりさすが」と改めて感心するのは当然としても、もうひとりの時松隆光(ときまつりゅうこう)は、ツアー経験は4年目にはなるが、今大会では昨年のPGA資格認定プロテスト第1位者の“新人扱い”の選手だ。

かつては米メジャー制覇も夢ではないと言われた48歳が、その時松のプレーに「さすが」と唸った。時松は、先週のチャレンジトーナメント「ジャパンクリエイトチャレンジin 福岡雷山」で、プレーオフの末に“初V”を飾ったばかりだ。

伊澤はその情報もちゃんと知っていて、「さすが勝つだけのゴルフをしている」と感心した。

「心が折れた」と言って、突如ツアーの世界から姿を消してから、3年と8ヶ月。
実戦から長く離れたブランクを埋めるのは、伊澤とてそう容易なことではない。
本人にももちろん想像はついていたが、それでもこの復帰戦では「予選が通れればいいかな」とのひそかな期待も、初日まさかの11オーバーに打ち砕かれた。

当然のことながら、自宅近くの福岡の練習場で打つ1打と試合で打つ1打は全然違う。
「風の影響もあるが、アイアンの距離感だったり、嫌なホールに来たときのリキ感とか。ここぞというときに腰が止まったり、アプローチやパットの感覚の違いもある。あとはアイアンの精度だったりすべてにおいて、まだまだ足りないと分かった」と、それでも2日目には1オーバーにまとめて上がってきたのは、やはりさすがというべきか。

この2日間で、自分の足りていない部分を痛感したからこそ「狙うべきところ、抑えるところ。時松くんは非常にメリハリがついていて、良いゴルフをするな、と。コースマネジメントも含めてしっかりと、思い切りの良いプレーをしていた。自分も学ぶべきところが多かった」と、2日目に改めて年若い時松を褒めた。

ツアーで積み上げた実績は、自分のほうがはるかに上でも、自ら実戦から長く背を向けた間にさび付いてしまった感覚を、伊澤は26歳下のゴルフに思い知らされていた。

「自分は自信を持って打っていくべきところで逃げたり・・・。経験がそうさせるというのもあるけれど。それを取り払っていかないと、勝つのは難しいね」。

この2日間を振り返りながら、伊澤は幾度となく「勝つためには」という言葉を使った。
「狙う勇気とか、時には逃げる勇気とか。そういう感覚を取り戻さなければ優勝出来ない」とも言った。

伊澤が3年8ヶ月ぶりに戻ってきた、一番の理由がそれだった。
「シードを取ることももちろん大事だけれど、そのためにゴルフをやっても意味がないから。今の自分がどれだけやれるか。この2日間で分かったから。また練習を積んで、小さな試合で予選会から挑戦して、ツアーで優勝争い出来るように頑張りたい」。予選落ちをしたにもかかわらず、正午すぎのホールアウトから5時間過ぎてもまだ、練習場に居座った。
かつて栄光を極めた男が再起をかけて、大きな一歩を踏み出した。

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