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中日クラウンズ 2012

河井博大(かわいひろお)がジャンボ効果で65をマーク

打てば寄る、チャンスも決まる。出だしから、3連続バーディのロケットスタートで、一気にスコアボードを駆け上がってきた。5つスコアを縮めて折り返すと後半は14番で、8メートルもの長いバーディトライも決まった。
この中日クラウンズは、尊敬してやまない師匠の田中秀道が、2000年に制した大会だ。

また、このオフは通算すると、1ヶ月以上も通い詰めたというジャンボ尾崎が3連覇を含む、最多タイの5勝をあげているトーナメントでもある。

「それだけになおさら重いタイトル。その和合で5アンダーは最高の出来」と、最後の18番のボギーは確かに「嫌な上がり」ではあるが、それを差し引いても大満足の65は、この日のベストスコアタイ記録をマークした。

「いきなり何を急に、自分を変えようとしている」と、田中に叱られたのは開幕直前。
昨年はプロ16年目にして、5月の日本プロで悲願のツアー初優勝を達成して、これまで重ねてきた努力がひとつの形を成し遂げたはずだった。
「これまでに積み上げてきた自分のスタイルがあったはずなのに」。
5年シードを得たことで、つい欲張った。
「トレーニングをして、スイング自体も振りの速さとかを変えて、今までより20ヤード以上も飛ばそうと思ってみたりとか」。
それで、すっかり深みにはまった弟子の混乱を、田中は見抜いていた。
「またお前は何を訳の分からないことをやっているのか、と」。
こんこんと諭されたときは、2012年の開幕が、もうすぐそこまで迫っており、「はちゃめちゃのまま、先週までの2戦を終えた」。

ようやくこの3戦目は、何よりショットの精度が問われる和合で、自分を取り戻した。
昨年はここで9位。
「去年もこんな感じで、自分の世界に入ってやっていたな、と。我を忘れず、自分を貫き通せばいいんだ」と、難コースがあらためて持ち味を思い出させてくれた。

オフは食事の席で、ジャンボにはこんなことを言われた。
「お前、去年の1勝で浮かれてるんじゃないだろうな?」。
「めっそうもない。1ミリも思ってません」と、全否定してもジャンボの追求は続いた。

「1勝は、一生に一度、神様がくれたご褒美だ、と。俺は認めない、と。あのときはお前、外からぽこぽこ入れて、勝っただけじゃないか、と」。
まるであの1勝は、まぐれだったと言わんばかりに責めたジャンボは、しかし最後に「2勝目は、俺が祝ってやる」。これ以上ないエールに気持ちが引き締まった。

今年41歳を迎える苦労人の星は、偉大な2人の師匠に目をかけられる
幸せを噛みしめながら、さらなる大金星を見据えて和合を行く。

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