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キヤノンオープン 2011

石川遼は「みなさんが“運命”と書くことは・・・」

百戦錬磨の20歳にも「まさか」の展開だった。それまで3打のリードを守ってきた小山内が、17番でトリプルボギー。
並んで迎えた18番は、逆転の絶好のチャンスも同時に右のOBゾーンに消えた。

ティショットで「飛ばそうと邪念が入ってしまった」。大事な場面で痛恨のミスは、打つ瞬間にカメラ付き携帯電話のシャッター音の影響も、確かにあったはず。

さかのぼれば13番でも、そのために二度も仕切り直しをさせられた。もっと言えばその前の12番でも同じ目にあった。

しかし、この日は1万2325人のギャラリーに、「これだけ人が集まれば、分かっていること。集中していれば、気にならないこと。集中しきれてないってこと」と、本人はあくまでも真摯に、最後のダブルボギーも「原因はスイングにしかない」と、自らのミスとして省みる。

そしてまた、同組の小山内もダブルボギーの幕切れに、2人で握手をしながら「ぐだぐだだな」と声をかけられ石川も、ただ苦笑するしかなかった。

「結果的に、最終日を面白くさせてしまった。他の選手にも、チャンスを与えてしまった。やる気にさせてしまった」。

スタートの1番は幸先の良いバーディに、前半こそ上々の滑り出しだった。しかし9番のボギーを契機に後半から雲行きが怪しくなった。ティショットが左に行きだした。
3位の集団からひとつ抜け出し、小山内との別次元の優勝争いも、結局4人が並ぶ大混戦にしてしまって、「明日は簡単な1日にはならない」と、いっそう気が引き締まる。

「1打差2打差に宮本さんや池田さん、実力者がひしめくバーディ合戦は、ぼーっとしてると簡単に落ちる展開。そのときに起こったことを、いかに受け入れて冷静にプレーが出来るか」。そう思うほどに、なおさらこの日も終了後の練習に身が入る。

プレーを終えて、スコア提出場に入る直前、加藤大幸キャディに勧められた。「一番に出すように」。成績順に組まれるペアリングは、成績が上位でなおかつ前日に、先にスコアカードを提出したものほど、後ろの組になる。

「遼は最終組のほうが向いているから」という相棒の配慮に、言われるがまま真っ先に出したら、偶然にも最終日最終組は、立山光広と久保谷健一という顔合わせ。
本人は気付いていなかったが、言われてみれば「あぁ〜、なるほどね」と、思い起こされるものが当然あった。

忘れられるわけがない。まだ15歳のアマチュアだった2007年に、史上最年少Vを飾ったときとまったく同じメンバーには、運命的なものを感じる?!
「いえ、今はまったく感じない」と無関心を装いながらも、「でも、みなさんが“運命”と書くのは全然僕は嫌じゃない。どうぞ書いてください」と言って報道陣を笑いの渦に巻き込んだ。

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