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「谷口さんは、いつも本気の1打を打っているから強い」髙橋竜彦(1月30日)

合宿でも谷口が先導切って若手を引っ張って・・・(撮影/すべてフェニックスカントリークラブ)
今年、賞金王のひと声で、フェニックスカントリークラブに集結した選手は7人。髙橋竜彦と市原建彦、白佳和(はくよしかず)と今年初シードの井上忠久、そしてまだ出場権のない木村忠昭と福永安伸と伊藤元気だ。
総勢8人2組が5日間、トーナメント形式のラウンド合宿で連日腕を競い合っている。

いつもの谷口の、歯に衣着せない“口撃”に、髙橋や井上は軽口で応戦しつつも内心で舌をまく。
こうして間近で見る賞金王の技術の高さもさることながら、シーズン中にもいつも感心するのは「心構え」だという。

たとえミスしても、不本意な結果に終わっても、「谷口さんの口からネガティブな言葉をいっさい聞いたことがない」というのは井上だ。
「たとえば、“ここにこんな木があったからミスした”というように、失敗を上手に何かに転嫁してやり過ごして、絶対に次のホールで引きずることもないんです。クラブやバッグに当たることもないし、谷口さんが自分のプレーに対して怒ってるのを見たことがない。そういう姿勢は、ほんとうにお手本になります」。

一方、髙橋が見習いたいのは「ラウンド中の緊張感」という。
それが練習であっても、「谷口さんは絶対に目の前の1打に手を抜かない」と、髙橋はいう。
「僕らとのラウンドでも、いつだって真剣で。本気で悔しがるし、本気で喜んでいる。常にそういう“本気の1打”を打っているから、実際の優勝争いでも強いんだなと、いつも実感するんです」。

初の賞金王に輝いた2002年。谷口はシーズン終盤に、頭部血管腫という病いに倒れた。
その最初の兆候が出たのが、くしくも、ここフェニックスカントリークラブで行われていたダンロップフェニックスの週だった。
「死ぬかと思った」というほどの症状に冒されながら、周囲にはひた隠しにして、最後まで執念で回りきった。そして翌週に緊急入院・・・。

そのときも含め、「谷口さんが、途中で試合を放り出したのを見たことがない」と髙橋はいう。
それは、もちろん今回の合宿中でも変わらない。
「絶対に途中でゲームを投げ出さないで、いつでもゴルフと真摯に向き合っている。どんな状況でもゴルフを捨てない姿勢が、いまの強い谷口さんを作り上げているんだと思います」(髙橋)。

合宿2日目に谷口に“勝利”したという福永は「たまたまです。たとえ練習でも、谷口さんが負けるなんてこと、めったにないらしいですから」と、はにかみつつ初めて間近にする谷口のゴルフには感じる部分が多かったようで、「まるでもう、試合のときみたいにピンに向かっていくイメージがある。オフのこの時期に、迷いや悩みがまったく見られないこと自体が凄い」と、度肝を抜いていた。

来月10日に40歳。
ベテランと呼んでもよい域にさしかかった第一人者には若手を引っ張り、自らもツアーを盛り上げていこうという責任感にあふれている。
今年もまた“常に本気の1打”を日々淡々と積み上げて、どんな感動のドラマを見せてくれるだろうか。
  • 合宿に参加した髙橋と井上(左から)が揃って舌を巻くのは「賞金王のゴルフへの心構え」
  • 若手の福永(右端)は「オフのこの時期に、迷いや悩みがまったく見られないこと自体が凄い」と・・・。

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