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ダイヤモンドカップゴルフ 2010

手嶋多一が3位タイ

プロゴルファーにとって、道具がいかに出来・不出来を左右するか。それを大いに物語る好発進だ。その前に、この日まず特筆すべきはパッティング。同組の丸山大輔が、呆れ顔でつぶやく。

「今日の手嶋さんは、神の領域」。

1日5バーディもさることながら、圧巻はパーパットだ。
出だしの10番から、面白いように決まる。
「3メートルくらいのが、13番まで続いた」。
その末に、14番で今度は12メートルのバーディパットをねじ込んだ。さらに15番は、10メートルが決まった。
そして最後は9番で、突然の大雨が降りしきる中、5メートルのチャンスで締めてボギーなしの67。
まさに、いきなり生まれ変わったかのような好調ぶりだ。

というのも、4月からの開幕4戦で、すべて予選落ちしており、近ごろ挨拶代わりに冗談交じりで交わす言葉といえば、「俺、今年まだ一銭も稼いでないねん。どうしてくれる?」。

不振の原因は、昨年10月。
2005年から愛用していたエースドライバーが破損した。
「なぜか、ずっと左に行くのが続いていて」。
メーカーに調べてもらったら、ヘッドが割れていることが分かった。
「まあ、ドライバーを5年も続けて使う選手なんていないから。金属疲労ですね」と、カラカラと笑ったが、その後の症状は深刻だった。

いくつ作ってもらっても、新しいドライバーに馴染めない。
「もともと、ドローヒッター。でも、ふかしたり、プッシュアウトしたり、その逆球が出て」。
安定したショットがウリの選手も、ティショットでフェアウェーをキープ出来なければスコアにならない。
「今週もダメかもしれない」。
2005年にも、開幕から4試合連続予選落ちという屈辱を経験しており、それを上回る自己ワーストの5連続・・・なら「さすがにへこむ」と、不名誉な記録更新に怯えた矢先だった。

開幕直前にメーカーから届いたニュードライバーが「コントロールしやすくてとても良い」。確かな手応えが、一歩確信に近づいた。
ドライバーの不振から、先の開幕4戦はどこか慌てたようなゴルフが続いていたが、「今日はフェアウェーも2回くらいしか外さなかったし、落ち着いて出来た」と満足そうだ。

「この勢いで久しぶりの優勝を」と、早々とツアー通算7勝目の可能性を示唆した報道陣につい笑顔で頷きかけて、急いでブンブンと首を振る。
「それはまだ言わんで下さい。まだ初日ですから。まだ予選通過だって、分かりませんから」。
慎重な性格なだけに、1日だけではまだ根拠にならない。喜ぶには、まだ早い。

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