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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2009

井戸木鴻樹が2位浮上

昨年のチャレンジトーナメントとファイナルQTのランキングで構成されるツアーの出場優先順位は先のミズノオープンよみうりクラシック終了後に組み替えられて、当初の46位から26位に順位をあげて、今大会の権利を得た井戸木が好調だ。

午後の最終組のひとつ前からのスタートしたこの日の北海道はときおり小雨がちらつくなど1日中薄曇り。プレー後半からますます暗さが増していく中で、しぶとくチャンスを作って、スコアを伸ばした。

15番ではグリーンのカラーから12メートルを決めたが、それよりも本人が満足なのは、5番や14番で1メートル前後を決められたことだろう。

以前はそれくらいの距離が「全然違う方向に飛んでいく。ほとんど病気」と本人も言ってはばからなかった。
不振を極めたパッティングに、復調の兆しが見え始めたことが何より大きい。

「1メートルに自信がついてくると、とりあえず乗せておけばパーは取れる思える。気が楽になって、ゴルフの幅が広がるんです」。

今週、計測中のドライビングディスタンスは2日目を終えて140位と下から数えたほうが早いが、この日のフェアウェーキープ率は2位とショットの安定感は抜群だ。
17番パー4では「飛ばへんくせに、池を警戒して刻みすぎて失敗した」と笑うがアプローチにも定評があるだけに、グリーン上の悩みが消えるとなお強い。

首位と1打差の単独2位で上がってくると、熱烈歓迎を受けた。
2人の女性に「井戸木さんが終わるまで、最後まで待っていたのよ!」と、握手した手をグイっと引き寄せられて、頬ずりされた。
「そんなんされたことないから照れるわ〜」と、真っ黒に日焼けした頬をほんのりと赤く染めた。

地元・関西で長寿レッスン番組を持つ井戸木には、今も熱烈なファンが多い。
一方で、きつい激励を受けることもある。
大好きな銭湯に行ったときのことだ。
シード権のない井戸木の現状を知っているのであろう。ある日、湯につかっていると、見知らぬ人から一喝された。
「風呂なんか入ってる場合とちゃうやろ」。
「そらそうですけども・・・」と、それでも人の良い笑顔を浮かべつつ、こてこての関西弁でバシっと言い返す。
「僕にも風呂くらい、入れさせてぇな」。

ユーモアたっぷりに反論しつつ、ファンの期待を知って、ますますやる気にさせられることも事実だ。
「あと5年はツアーでやりたい」との思いを強くする。

シード権の奪還に燃える今季3戦目の47歳が、いきなり優勝争いに割って入った。
久々の快進撃も、「この位置で回る人たちは、みんな調子の良い人ばかり」と週末も厳しい戦いになることは、覚悟の上だ。
「でも、僕は僕のゴルフをします」ときっぱりと言った。
「焦るとまたパットでパンチが入ったりしてしまうでしょう。自信をつけるには、成績を上げるしかないですし、とにかく明日も自分のパットのタッチだけ考えてやりますわ」。
そう言って、三日月型に目尻を下げた。

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