記事

今季1勝! ゴルフ界のマー君が「次は平均ストロークを狙います」

お父さん、お母さんと、地元応援団の声援を一身に受けて今年、ツアー初優勝を飾った
かつてレギュラーツアーで曲げない選手の代名詞といえば、今や世界のイドキこと、井戸木鴻樹だった。フェアウェイキープ率がツアーで計測されるようになった01年から09年までの9年間で、1位が実に5度。“全盛期”まっただ中の井戸木が、曲げない秘訣を聞かれた際の常套句が、「あえて球を曲げて打つんです」。

球筋を、自在に操る昭和の業師を、まるで“踏襲”するように現れたのが、平成生まれの21歳。
今季のフェアウェイキープ率1位に輝いたのは、川村昌弘。

部門別ランキングの1位者を表彰する、今月9日の「ジャパンゴルフツアー表彰式」で、たまたま川村のそばにいた大ベテランが、口を尖らせた。

「だってこの子は有利ですよ。僕らは必死に真っ直ぐ打とうとするけど、この子はこうやって・・・」と、谷口徹は、指で左右に弧を描くしぐさをしながら「・・・この子はこうやって打つから、人よりも20ヤードも余分にフェアウェイを広く使える」とちょっぴり皮肉を交えつつ、球を打ち分ける技の巧みさをそう表現した。

先輩プロの小田孔明も、川村に脱帽しているという。「あんなにゴルフが上手い子に久しぶりに会った」と。「あの若さで、あれだけ球を打ち分けられる子は、そういない。21歳とは思えない玄人ゴルフする」と言った。

しかし当の本人は、このたびの受賞を喜ぶというよりも、むしろちょっぴり恥ずかしそう?!
「だって、1位といってもフェアウェイキープですからねえ・・・」と苦笑いで、「ドライビングディスタンスとかだったら格好いいんでしょうけど。フェアウェイキープと言われても、アマチュアの方にはピンと来ないでしょう?」。

それと、曲げない選手の称号を獲ったわりには「バーディも取れていなければ、パーオンもしていない」と、確かにバーディ率ランキングは40位にとどまり、パーオン率も25位とふるわなかった点が、本人としてはかなり不満だったようだ。

「次は、そこらへんも狙っていきたい。あとは平均ストロークとか。あれが一番カッコイイですよね!」と来季にむけて、目を輝かせながら無邪気な野望も「まあ・・・、曲がらないことは僕の長所なんで。何かで一番になるということは、良いこと。記念すべきことですよね」と、等身大の自分も一応、褒めた。

そんな川村が今年、ツアー初優勝を飾った舞台が大阪の茨木カンツリー?楽部であったことも、どこか因縁深い。そこは今年、全米プロシニアを制した井戸木が小4で、「初めてクラブを握った」というコースだ。今年、「アジアパシフィック パナソニックオープン」の舞台となった。元祖・曲げない男のいわば“原点”で、新星がスター街道を歩き始めたのである。

この1勝で、世界への扉も開けた。同大会の勝者に与えられるアジアと日本の両ツアーのシード権を獲得して、先週はさっそくアジアンツアーのタイランドゴルフ選手権に参戦。18位に入った。
このオフも、今季前半戦に左手首を痛めて、思いがけず出遅れたのを反省に、「体のケアはきちんとしながら、今年は試合にバンバン出たい」と実戦を積みながら、アジア各地で調整を重ねていく計画だ。

あだ名は“マー君”。今年の野球界で旋風を巻き起こした選手と同じ呼び名の21歳が、ゴルフ界のMVPを目指す・・・!!

※パー3を除くティショットがフェアウェイをとらえた率を示すフェアウェイキープ率で、63.75%を記録した川村には一般社団法人日本ゴルフツアー機構の鷹羽正好・副会長より、記念のトロフィを贈りました。
  • 曲げない男の称号を手にした川村。来季はアジアも視野に、さらなる飛躍を目指す。

関連記事