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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2009

田中秀道がコースレコードタイをマーク

小さな巨人から、久々にこんな言葉が飛び出した。「今日は楽しかったです」。最終18番は、ピンまで255ヤードの第2打を、7番アイアンで残り104ヤード地点に刻み、第3打を手前4メートルのチャンスにつけた。

この日ボギーなしのラウンドは、最後もきっちりバーディで締め、ギャラリーの歓声に応えて拾い上げたボールを高々とスタンドに投げ込んだ。
この日7アンダーは、コースレコードタイ記録の65をマークして、7位タイに急浮上した。

先のミズノオープンよみうりクラシックは初日6位タイにつけながら、「今日のスコアはウソなんです」と、手を振った。
持ち球のドローボールに手を加え、よりストレートに近い球筋を追い求めていた最中で、その日のスコアは本人にも半信半疑だったからだ。

もっとさかのぼれば渡米から、5シーズン目の2006年にシード落ちを喫し、心身共にぼろぼろの状態で米ツアーから帰国してからというもの、この人の口から前向きな言葉が語られることはほとんどなかったが、それでも死にものぐるいで復活を目指し、ここに来てようやく行動やコメントにも変化が見られるようになってきた。

昨年1年間の療養のあと、復帰第一戦を迎えた今年の開幕戦で、「6月ごろをめどに戦える状態にする」と話していたが、事は計画通りに運んでいるようだ。

理想のスイングを体現するためにはアドレスで、本人にとっては「左の林に向かって構えている感覚」を克服しなければならず、実際にはそれが正しい構えと分かってはいても、違和感と恐怖は拭えず、それらを振り払うために、「これで間違いないと信じて、目をつぶって振り抜いていく」といった状況だが、この日のゴルフで確かにひとつ、吹っ切れた。

「自信を取り戻すには、今のゴルフではまだまだ。決定打にはならないんです」とまだまだ辛い点数をつけながらも「こんな中でもスコアを作れたというのは良かった」と田中。

「あとは、こういうのを少しずつ増やして、自信にしたい。自信をつける結果を出していきたい」と、話していたちょうどそのとき、そばを富田雅哉が通りがかった。

身長185センチの弟子を指さして、「そうじゃないと、あんな“巨人”にも勝てないですからね」と笑い、「いつまでも、富田に偉そうにしていたいから。頑張らないと」と、師匠の意地を見せていた。

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