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ANAオープン 2009

井上清孝「自力で出ていることを、アピール出来れば」

ホールアウトしてすぐに、クラブハウスですれ違った尾崎健夫に改めて感謝をこめて、深々と頭を下げた。アプローチに関して指導を受けたのは、3日目9位につけた、7月のセガサミーカップだった。
やはり地元・道内で行われたトーナメントでたまたま練習場で一緒になった際、「右側に体重が残ったまま、手だけで打ってるな」と指摘された。

それはアプローチに限らず、ショットでもその傾向がある。そう言われて早速修正を加えたら、たちまちスイングに手応えが出てきた。

この日初日の好発進は、ジェットのアドバイスを最大限に活用した成果だ。
それに加えて、地の利も大きなアドバンテージだ。

祖父の清次さんから親子3代続くプロゴルファー一家は井上の高校進学と同時に家族揃って出身の岐阜県から、ここ北海道に移り住み父の幸一さんは現在、ここ札幌ゴルフ倶楽部の輪厚コースで、支配人をつとめる。

それだけに、数あるトーナメントの中でも井上が、「一番、練習を積んでいる」舞台であり、プライベートのラウンドなら7アンダーをマークしたこともあるホームコースでもある。

「試合は、特にグリーンが難しくなるので」と、大会での自己ベストはこの日の68。
しかも、ボギーなしのラウンドは、普段、厳しい父親にもちょっぴり胸を張れる。

この日も、スタートの1番や9番のインターバルから10番、そして最終18番と、とクラブハウスに近いホールで息子の様子を気にしてひそかに見守る父親の姿を、幾度となく確認していた。
今週は、苫小牧の実家から車で約40分の“自宅通勤”。
「スコアが悪いと、家の雰囲気が悪くなるので頑張りたかった」と、おどけて笑った。

そして、「自力で出ていることを、アピールしたかった」。
本大会は、ファイナルQTランクからの出場だ。
「でも、僕は推薦で出ているんだろう、と思っている人が多いみたいで」。
つまり、支配人の息子という特権で出場しているのでは、と周囲に思われていることが、本人には心外なのだ。
それもこれも、プロ10年目にしていまだツアーの出場権を持たないことが、起因しているのもまた確かだ。

これまで過去2度の出場も、マンデートーナメントからの参戦で、父の力を借りたことはない。それを、今度こそ実力で知らしめたい。
「ここで結果が出せれば最高ですね」。
いつも、応援してくれるここ輪厚のみなさんへのそれが何よりの恩返しにもなる。

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