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VanaH杯KBCオーガスタ 2009

単独首位の原口鉄也は「若い子たちとの差を詰めるには…」

568ヤードの最終18番パー5は、318ヤードのビッグドライブ。残り約250ヤードは5番アイアンで、2オンに成功して胸を張る。
「もっと振れば、もっと飛びますよ」と、そう得意げに言ってから、舌をぺろりと「なんちゃって」。

2番で6メートルを決めて、この日最初のバーディを奪うと、8番、10番では9メートルと、長いチャンスがよく決まったのは、「ショットがいいから」と原口。
特にドライバーだ。「飛んで曲がらない。ショットがいいと、焦る感じがない。グリーンでも集中できる」。

自身満々で初日から、いきなりボギーなしの8アンダーで原口がホールアウトしたその頃、クラブハウスではブーイングが起きていた。

先週まで「絶不調」とぼやき、「もう、俺はゴルフをやめる」とまで言い切っていた。
その選手が1週明ければ、なぜかリーダーボードのてっぺんにいる。
某選手がつぶやいた。
「死んだふり作戦だったのか……」。
そう言いたくなるようなみごとな化けっぷりは、クラブメーカーの尽力によるところが大きい。

今年35歳。自分はまだまだ若いつもりでも、姪っ子に「おじちゃん」と呼ばれる年齢にさしかかり、40代前後を指す「アラフォー」を意識するようになって、道具にも工夫が必要だと痛感している。

イケイケで迎える開幕とは違い、夏場はそろそろバテも来るころ。そういう体調の変化に応じ、シーズンも半ばの冒険を承知で思い切ってクラブを変えてみようと考えた原口は、この1ヶ月というものナイキ社のクラブ制作スタッフの阿部貴史(たかし)さんに「無理難題を突きつけながら」試行錯誤を続けてきた。

そうしてようやく納得のいくものが、出来あがってきたのが今週だった。
ドライバーはロフトを8.5度から9.5度に変えて、これまで以上に距離が出るようになった。
アイアンは、キャビティからマッスルバックと難度の高い形状に変えるかわりに軽量のカーボンシャフトを装着することで、より距離感が合あわせやすくなったという。

「今日はショットがバチバチ当たって先週の調子の悪さも、吹き飛んじゃいました」。
32度を超える暑さも忘れてしまうほどの好調ぶりに、「エコゴルフが出来た」と喜ぶ。

1打差2位に控える石川遼を意識して、「おじさんが、体力も気力も有り余っている若い子たちとの差を詰めるためには、そうやって新しいものを探して工夫していかないと」などと、ずいぶんと老け込んだコメントに終始した原口だが実際は、20代のころよりも今のほうがずっと若々しい。

2000年に頸椎ヘルニアを患うまでは、身長165センチに体重はなんと100キロを超えて、真夏の芥屋も、なんとか18ホールを回るので精一杯だった。
「もう16番あたりから、キャディにあと何ホールあるんだとか聞いてみたりして……。この暑さも若いときのほうがずっとつらかった」。

怪我を機に、一念発起でダイエットに取り組み体力強化につとめた今は、涼しい顔で上がって来られる。
プロ13年目、シード4年目の今季の目標は、もちろんツアー初優勝だ。まずは好スタートを切って「チャンスですし、頑張ります」と気合いを入れ直した。

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