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カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2007

手嶋多一がツアー通算6勝目

大会主催のカシオ計算機株式会社、樫尾和雄・代表取締役社長よりうけた優勝カップ
この日最終日。同じ組で回った尾崎健夫が、感嘆の声をあげた。
「1年間、海外で苦労してきた人間の粘り強さと実力を見せ付けられた」。特に後半は、2つ後ろの最終組のクリス・キャンベルとの一騎打ち。
「バーディをとって抜いたと思っても、次のボードを見たらまた抜かれてた」(手嶋)という大接戦は、17番パー4で奥5メートルの下りのバーディチャンスを決めて、ついにタイで迎えた最終18番。
ピン奥8メートルに、2オン成功。2パットのバーディを決めて、キャンベルを待った。

ファイナルQスクールを突破して、念願の本格参戦を果たした欧州ツアーは19試合に出場して予選通過は9回。
しかし「実際は、15試合以上は落ちているような感覚」。
初日に好スタートを切りながら、2日目以降に急降下、という試合がいくつもあった。芝質やコースセッティングの違いだけではない。想像を絶する風、厳しい冷え込み。
昨日、半袖姿でプレーしたかと思ったら、翌日には大雪という週もあった。
天候の急激な変化についていくのだけでも、ひと苦労だった。

そして、それはコースの外でも続いた。
学生時代にアメリカ留学の経験があるが、会場は英語圏ばかりではない。
毎週、国境を越える旅の連続。
言葉の問題もあって、交通、宿泊の手配はただそれだけで神経をすり減らすことばかりだった。
一番の悩みの種は、荷物が次の会場に無事着くかどうかという心配だった。
ポルトガルからロンドン経由で飛んだときは、スーツケースがなくなった。
夜中の12時に空港に到着し、1時間半待ったが結局出てこず、そのまま三日三晩、同じ服で過ごすしかなかった。
結局、その10日後に出てきたが「毎週、“ああ、今週は無事クラブが届いた”と、胸を撫で下ろす」。

予選落ち続きでくじけそうになった心に、度重なるハプニングが追い討ちをかけた。
次の会場に向かうとある空港カウンターで、理不尽な対応にクレームをつけたら逆切れされた。
チケットをその場で破られて「なら乗らなくていい」と言われて、土下座せんばかりに「乗せてくれ」と請うたこともある。

散々な目にあった上に、結局賞金ランクは153位に終わり、シード権はおろか予選会に再挑戦するにも不可能な順位に「自分のゴルフはこんなにも、通用しないのか・・・」。
打ちのめされて帰国した。
傷心のまま迎えた、この今季国内5戦目が自身の最終戦となるはずだったのだ。

前日3日目には14番パー3で、奥から8メートルをなんと4パットしてダブルボギー。3打差の4位タイに沈み、3日間同じ組で回った谷口徹には同級生の気安さで、「お前が今年、ヨーロッパで調子が悪かった理由が分かった」と軽口を叩かれた。

笑ってかわしながらこの1年間、間近で見てきた欧州の選手たちを改めて思い浮かべた。

「感情もあらわに、ミスしたらよく切れるが、でもゴルフ自体は切れていない。どんな天候の中でもみな忍耐強くプレーしていたと思う」。彼らのハングリー精神に毎日のように、驚嘆させられたものだ。
「あの中にいたら、自然と自分も強くなれた気がする」。
ただ、打ちのめされて帰ってきたのではないこと。とてもこのままでは終われなかった。

結局、最終18番でパーに終わったキャンベルに、いつもの人の良さで思わず「ソーリー」と何度も詫びつつ、「今年はヨーロッパでボロボロでしたが、これで一気に晴れました」と、表彰式で正直な胸のうちを吐き出した。
今年のツアーチャンピオンと、賞金ランク上位25位までしか出場できないゴルフ日本シリーズJTカップの権利を得て次週こそ、まさに今季最終戦。
今年1年間で積もり積もった悔しさを、この頂上決戦で完全に吐き出すつもりだ。

  • 優勝副賞は地元高知県の特産品が盛りだくさん。芸西村長賞の地酒と万寿笠セットに喜んで、「高知県が大好きになりました!」
  • 大会を支えてくださったボランティアのみなさんと

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