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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2007

片山晋呉がツアー通算23勝目

最後の最後に、この2週間の思いのたけを吐き出した。首位タイで迎えた最終18番。7メートルのバーディパットは、「ラインを読んでる場合じゃない。ど真ん中から、まっすぐ強目に打つしかない」。
外せば、深堀と近藤とのプレーオフは必至。
しかも、同じ最終組のコンランと今野がもしバーディを沈めたなら、勝率はさらに下がって「5分の1」だ。

「そうなったら絶対に負けるだろう」と、覚悟を決めた。
「全身全霊で打った」というこの日もっとも気合が入った渾身の1打は、もし外していたら「1メートルはオーバーしてた」と、振り返る。
勢いよくねじこんで吼えまくる。
何度こぶしを握ってもし足りない。キャディと抱き合いハイタッチしてもまだ飽き足りない。
鬼の形相でグリーンをぐるりと一周するさまは、リング上の格闘家さながらだった。

「先週、悔しい思いをしてたから」。
2度目のタイトルをにらんで臨んだ日本オープンで、谷口徹に逆転負けした。
1年前から周到に準備を重ね、これ以上ないくらい仕上げて挑んだ日本一を2打差で逃した。
「先週から、相当たまってたから。それが今日、最後に全部出た」。
予定より1週遅れのツアー通算23勝で、その鬱憤をすべて晴らした。

永久シードまであと2勝。
優勝賞金2200万円は、8年連続で1億円を突破した。
賞金ランク1位の谷口徹には約2000万円差。4年連続5度目の賞金王も見えてきた。

お世辞にも、体格に恵まれているとはいえない。
ましてデビュー直後にヘルニアの手術に踏み切るなどあちこちに爆弾を抱えた状態で、毎年この位置で戦い続けるのは、並大抵のことでないだろう。

それでも先陣を切り、走り続ける責任を自覚している。
「典型的な日本人体型の僕でも努力と工夫を重ねれば、ここまでやれる。そのことを見せ続けなければならない立場にある」。
少しでも気を抜けば、あっという間に追い越される。
頂点に立つものだけが知る厳しさ。
「でも、そういう状況が僕は楽しくて仕方ない」。
だから片山は、立ち止まらない。

自身のゴルフを立方体のゲームになぞらえて「ルービックキューブみたいなもの」と表現した。
1面ずつ色を合わせるように、課題をひとつずつ克服し、理想のスイングを構築し、ようやく4面まで完成したと思っても「6面揃えたかったらもう一度、すべて壊さなければならないこともある」。

まさに今シーズン序盤がそうだった。
4月のマスターズまでに「4面」まで出来上がっていたスイングは、オーガスタに打ちのめされたあとやるべきことが山積みとなり「もう一度、すべて壊すしかなかった」。
またいちからの立て直しも「夏までは1面も揃えられていなかった」。

それから急ピッチで進められたスイング調整はいま、2週連続の優勝争いで再び4面まで完成したという。
「あとは何回か、またカチャカチャカチャ、とすれば・・・」。
6面きれいに揃ったそのときこそ、ツアーにまたいくつかの金字塔が打ち立てられることになるのだろう。

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