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日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズカップ 2005

細川和彦ちょうど重なった妻の誕生日に「これ以上ない最高のプレゼント」

ツアープレーヤー№1を決める今大会。優勝トロフィーが、ウェッジウッド社製と知ったときから夫には、「1度でいいから、あれを取って」と、冗談交じりに話していた。

たまたま、最終日が自分の誕生日と重なった今年。
「まだ、何もプレゼントを買っていないよ」という夫に、軽い気持ちで「じゃあ、あのトロフィーでいいわ」と言った。

まさか、その夢をほんとうに叶えてくれるとは。
妻・玉枝さんは「信じられない・・・」と、何度もつぶやき目頭を押さえた。

4年前に難病を患って、苦しむ夫の姿をそばで見てきた。
当時はたった2週間ほどのうちに見る見る痩せて、体重は10キロ減。68キロまで落ち込んだ。
やっと少し回復したと思ってもひどく全身がむくんだり、原因不明の倦怠感に襲われた。

しばらく一進一退が続いた病状は、ただ見守るしかなかった。
シーズン中は転戦続きで、どうしても食生活が不規則になる。
家にいるときくらいはせめて体に優しい食事をと、野菜や酢の物を中心にした料理を振舞うので精一杯だった。

夫には律儀なところがあり、それぞれの主催者を気遣って多少の体調不良くらいなら、「出られる試合は、ぜんぶ出たい」と言ってきかない。
ツアーを盛り上げたい、という責任感も人一倍強い。
そんな性格が、少なからず影響したのだろうか。
持病の潰瘍性大腸炎は、ストレスがもっともいけないと、医師にも言われている。激しいプレッシャーがかかる優勝争いなど本来ならもってのほかだが、幸いしたのはこの大会が地元・茨城県の開催であったことだろう。

会場まで車で40分の自宅通勤が、夫の負担を軽くしていたように思う。
コースでは険しい表情の夫も、家に帰れば子供たちを相手にリラックスした表情を見せた。
最終日の前夜は早々に就寝して、大いびき。
朝も機嫌よく起きてきて、ラッキーカラーのオレンジのポロシャツを勝負服に選んだ。それにあわせ、自分もオレンジのシャツをまとって会場入りした。

その1打1打を見届けようと、スタートからぴったりとついて歩いた。
難易度1位の17番パー4でしぶとくパーを拾い、いよいよ首位に並んでもつれこんだプレーオフも、しっかりこの目に焼き付けた。
地元ファンの声援に後押しされて、最後まで息のつけない大接戦を制して頂点に立った。とうとう74ホール目に栄冠を勝ち取った夫の姿が、たちまち涙でゆがんでいった。
誕生日に、「これ以上ない最高のプレゼント」を贈ってくれた。
溢れんばかりの感謝の気持ちが玉枝さんの頬を、涙となって次から次へと伝い落ちた。

※今季ツアープレーヤー№1の栄誉に輝いた細川はウェッジウッド社製の優勝トロフィーのほかに、賞金2400万円と、5年間のシード権と、8月18日に開幕する世界ゴルフ選手権NECインビテーショナル(米オハイオ州アクロン)の出場権を手に入れました。

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