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アンダーアーマーKBCオーガスタゴルフトーナメント 2005

伊沢利光家族を支えにつかんだ復活優勝

最終ホールでバーディパットを打つ直前。グリーンサイドに家族の笑顔を見つけて「ジ〜ン・・・と来た」。
2003年に自身2度目の賞金王の座についてから、いちばんつらかったのが昨年の春。
原因不明の微熱が長く続いた。20箇所以上も病院を渡り歩いたが、原因がわからない。長期の戦線離脱を強いられた。
当時はゴルフへの復帰どころか、生命の危機すら感じたこともあった。

「試合には出られなくても、命のほうが大切だよな、なんて考えたり…。治療法もないし、このままどうなっちゃうんだろうとすごく不安だった」。

そんなとき、心癒してくれたのが家族の存在。
苦しい時期も、子供たちの相手をしていれば気が休まった。
同時に「この子たちのために、また稼いでこなくちゃ」と、励まされた。
1袋3000円という高価な漢方を毎日服用しながら、懸命に回復につとめた。
ハードなランニングで汗を流して、復活への道を模索した。
昨年8月にはコーチの岡本正善氏と正式に契約を結び、初めてメンタルトレーニングにも踏みきった。
「どんなに完璧でも、100%ということはない」スイング調整にも貪欲に取り組んだ。

その末に先月7月にようやく、復活の手ごたえをつかむことができた。
「いつ勝てるかは、運とそのときの調子の問題。今すぐには勝てなくても、自分には実績も経験もある。それで補っていける」と言えるまでになっていた。

機は熟していた。待ちに待った“復活優勝”は、やはり家族の前だった。
2000年により良い練習環境を求めて福岡県に居を移して6年。
久しぶりに揃って応援に来てくれた。市内に取ったホテルから、毎日家族に見送られてコースに通った。その大会で勝てたことに、改めて存在のありがたみを噛み締めずにはいられない。

ちょうど大会週の金曜日に3歳の誕生日を迎えたばかりの長男・丈一郎くんには、ウィニングボールを握らせた。
優勝スピーチで、妻・和子さんと長女・優美子ちゃん、次女・今日子ちゃんを呼び寄せた。
コメントを求められた和子さんは「・・・ほんとうに嬉しいです」と、声を詰まらせた。
「自分も泣くかな、と思ったけどね・・・(笑)」。
むしろ、勝てない時期も辛抱強く支えてくれた妻の涙を、夫は優しい笑顔で包み込んだ。

  • (株)ドームの安田秀一・代表取締役より賞金2000万円を受け取る伊沢。「今年新たに特別協賛してくださったドームのみなさんに感謝したい」

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