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アコムインターナショナル 2004

鈴木亨「娘ともども、これからも応援をよろしくお願いします!」父親の自信と、威厳を取り戻した日

オフは1日30分以上のランニング。試合中にも欠かさない1セット300回以上のスクワット。
この夏、ハードなトレーニングを再開したきっかけは、女子プロゴルファーでもある妻・京子さんのこの一言だった。
「あなたのお尻、垂れてきたみたい」。
鈴木はもともと、下半身のキレで振っていくタイプ。そのスイングの生命線でもある部分が、加齢とともに衰えてきているのではないか、と妻は懸念していたのだ。

「あなたが考えているよりも、簡単なところにヒントはあるものよ」と、言われて気がついた。
鈴木の父・基之さん(68歳)は大学野球部時代に、長嶋茂雄さんの1学年後輩。
根っから体育会系の父の監視付きで、幼い頃から厳しいトレーニングを積んできた。そのおかげで、いまの強靭な下半身が養われた。

「…それが最近では、いろいろ考えることばかりが先で。トレーニングも怠けがちだった」。
筋力の衰えがスィング、ひいては成績にもろに響いていたのだ。
「考えるよりもまず、自分には体を“苛め抜く”ことが先決。結果はその積み重ねからしか、得られるはずもない」。
娘のことしか目に入っていない、とばかり思いこんでいた妻からの、鋭い指摘が苦しい日々から救ってくれた。

心を入れ替え、ストイックにトレーニングに励んだ父親に、早速、ご褒美が来た。
54ホールの競技短縮が決定し、2年ぶり7勝目が転がり込んだ。最終日、妻と娘は都内でラジオの収録が

あり、応援には来られなかったが、優勝の瞬間「パパ勝ったよ!」と送ったメールには、絵文字つきのかわいい返事が届けられた。

「おめでとう! 愛里が、言ったとおり1位になったね。愛里の予言が当たったね!」。

愛里ちゃんはこの冬、ブロードウェイミュージカル「34丁目の奇跡」の子役に大抜擢されて、初舞台を踏む。
愛里ちゃんがデビューしてからの2年間、勝ち星に見放されていた鈴木は、
「父親が満足な成績を残せなければ、娘の活動にもマイナスになるから」といって、娘が芸能人であることを、これまでは決っして自ら話そうとしなかったのだが、
「良い娘を持って俺って幸せ! …みなさん、ぜひミュージカルも見てやってください。そして、娘ともども、プロゴルファー鈴木亨の応援もよろしくお願いします!」。
優勝インタビューで口火を切った父の表情は、堂々と、自信に満ち溢れていた。

  • クラブハウス内で行われた表彰式では、木下恭輔・大会名誉会長と、木下盛好・大会会長に挟まれて・・・

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