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サントリーオープンゴルフトーナメント 2004

14歳の伊藤涼太君が、史上最年少予選通過記録を達成!!<サントリーオープン2日目>

最終18番。残り158ヤードのバンカーショットは、ピン方向に高い土手。直接ねらえば、ヘリを直撃する。ボギーを覚悟して握った6アイアン。土手を避け、強烈なフックをかけて打ったショットはピン手前5.5メートルに2オン成功。
ボギーどころかピンチからのバーディチャンスに、沸きに沸いたギャラリー。
照れくさそうに歓声に答えながらグリーンにあがってきた、ひょろりと痩身の男の子を見るなり「あの子、まだ中学生なんだって!?」ロープの外には、さらに驚きの声が広がっていく。

最終ホールも難なくパーにおさめて、通算1アンダー。史上最年少での予選通過記録の達成に、帽子を脱いでぎこちなく拍手に応えた14歳は、しかし平然と言ってのけた。
「今回は普通にプレーできれば、予選は大丈夫だと思っていたんです」。

前回出場したトーナメント、6月のマンダムルシードよみうりオープンから、目を見張る急成長ぶりだ。7月の日本アマで2位。史上最年少で、本戦突破を果たした全米アマ・・・。数々の舞台でバッグを担いでくれた恩人、米国在住の末永慎吾さんと取り組んできた課題が実を結んだ。

以前は素振りもせずに、適当にティアップしてショットに入ることが多かった。そんな思い切りの良さはある面では長所ともいえるが、その分、プレーが雑になることもある。

「構える前にひつこいくらいに、後ろから位置をチェックしてからアドレスに入れ、と。素振りも2回以上。いわゆる、プレショットルーティンが、試合中の緊張の中でも無意識のうちにできるように。もともと持ちあわせている涼太の天性を大事にしながらも、まずはまっすぐにアドレスさせることを覚えこませようとしたんです」(末永さん)。

そんな取り組みが、間違いでなかったことを実感したのは今週水曜日。レティーフ・グーセンの練習風景だった。世界ランカーが特に意識して練習していたのは、球筋やスイングよりむしろショットに入る前のセットアップ。
「肩のライン、腰のラインがぴったり決まってからようやくスイングに入る。・・・それを見ていて、ますます涼太も目覚めたようです」(末永さん)。

世界の技に触発されて、いよいよ迎えた本番は、「これまでで、最高の出来」(末永さん)。特にアイアンショットが冴えに冴えた。「緊張もほとんどしなかった」堂々としたプレーっぷりで、この2日間に積み上げたバーディは9つ。
わずか14歳の中学生の活躍に、プロも思わず言葉を失う通算1アンダー17位タイで決勝進出。

「僕が14歳のとき、プロの試合で予選通過できるなんて、考えたこともありませんでした。時代は、変わりましたね」(昨年の賞金王、伊沢利光)。
「大変な快挙。・・・でも伊藤君は、小学生のときからスバ抜けた才能を持っていた選手だったので、記録を塗り替えられるのは時間の問題だと思っていました」(1984年の日本オープンで15歳と11ヶ月19日の最年少予選通過記録を保持していた手嶋多一)。

歴史を塗り替えた恐るべき中学生アマは、「優勝・・・はチャンスがないわけじゃないけど、自分の実力を試してみたい。明日からは、もっと積極的に狙ってひとつでも上位に行く」。改めて、プロの世界に宣戦布告だ。


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