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ウッドワンオープン広島ゴルフトーナメント 2003

『とにかく勝てばいい。それが大切』幾度となく負けを覚悟した最終日、伊沢利光の20ホール

「パパ!おめでとう〜」と大喜びで駆け寄ってきた長女・優美子ちゃん(5歳)を両 手でひょい、とかかえて笑顔の抱擁。「ありがとうね〜!」。
今週、きゅうきょ応援に駆けつけてくれた家族の前で、パパの威厳を示す2週連続 V。自身3度目の快挙に「せっかく見に来てくれたのだから、やはり、負けるよりは ね(笑顔)」。先週は声を震わせ「初優勝のときより嬉しい」とまで言った。涙、涙 の優勝シーンだった。だが今回は、他に次女・今日子ちゃん(3つ)、長男・丈一郎 君(11ヶ月)、妻・和子さんに迎えられ、みんなで笑い転げて勝利を祝った。
1年8ヶ月、苦しみぬいた2001年の賞金王が、ようやく勝ちパターンを思い出した。
フロントナインは4番でOB。7番でも左に大きく曲げて、隣の8番ホールへ打ち込むピ ンチもあり、「今日は亨さんかな・・・」混戦から一時、首位に踊り出た鈴木亨の優勝 を予想してなかば諦めるシーンもあったが、さらに雨脚が強くなったハーフターン で、再び気持ちを入れ替える。
「ここからは、我慢比べだ」。
7番で、ティショットを左に曲げた懸念は、前半のうちに払拭していた。コーチの江 連忠から忠告されていた“左に曲げたときの対処法”を思い出したのだ。「球がつか まり始めたら、一回、ドライバーでフェードを打って修正してください」。この言葉 をさっそく実戦。次の8番で試してストレート目の球、さらに9番のティショットでよ うやく思い通り完璧なフェードが打てたことで、「ブレを調整できた」自信を取り戻 して挑んだバックナイン。
伊沢には、容赦なく降り続く土砂降りの雨も、妨げにならない。
「僕はグリップが濡れても気にしない。雨の日は、ラフからのフライヤーもないし、 若干、飛距離が落ちる程度で、何も意識しない」豪雨の八本松を淡々と突き進む。
ただ1点、雨に重さを増したグリーンが読みきれず、「結果的に我慢したんだか、単 に入らなかっただけなのか…」3番、4番の1バーディ1ボギーのほかすべてパーの スコアカードには苦笑いを浮かべたが、それでもしぶとく居残ったプレーオフ2ホー ルで決着。
その1ホール目には、グリーン奥からのパッティングがカップ寸前で止まり、片足で 思わず5、6歩よろめいて「あれは一瞬。入った!と思った。でも結局入らず、“伊 沢、流れ悪し”で今日は負けかな、などとよぎったりもしましたが・・・(笑)」最後 まですんなりとはいかなくとも、「とにかく、勝てばいいわけですから。勝つこと が、いちばん大切なのですから」とキッパリ。
昨年から取り組んできたスイング改造の成果が「よりいっそう確信できた」という今 回のツアー14勝目。雨の中、最後までその瞬間を見守ってくれた大ギャラリーの声援 は、もちろん嬉しかった。だが、ツアーきってのマイホームパパが、何よりも感激し たのは最愛の子供たちからのこの賛辞。
「パパ、かぁ〜っこい〜いっ!!」。
さらに逞しさを増して帰ってきたチャンピオンが、このときばかりはデレデレのパパの顔になった。

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