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アジアパシフィックオープンゴルフ選手権競技 キリンオープン 2001

“マスターズ帰り”の中嶋常幸が、2位タイに浮上

ホールアウトした中嶋が、饒舌に語る。
「100ヤード先から眺めても、スコアが読めない選手でありたいんだ。たとえば、タイガーのように」
5オーバーで最終ホールのセカンド地点にやってきた選手がいたとしよう。
その選手は、すでにゲームを投げているかもしれない。
そして、その投げやりな態度が、100ヤード先にいるギャラリーにまで伝わってしまうことがある。

逆に、8アンダーであがってきた選手がいたとしよう。
好スコアの興奮に浮き足立ったその様子は、遠目から眺める観客には、すでに勝ち誇ったように、傲慢に映るかもしれない。
どちらの場合も、中嶋の理想とはなじまない。 「75で上がろうが、65で上がろうが、はたから見てもまったく分からない、そういう選手が好きなんだ。ただ、今、やれることを一生懸命やる・・・。タイガーもそういう選手だと思わない? 僕もそんな選手でありたいよ」

この日、9番で1ピン距離のバーディパットをはずしても、中嶋は、腐るふうでもなかった。
通算6アンダーであがってきた最終18番グリーン、2メートル弱のバーディパットをはずしても、やはり、淡々とした表情は変わらなかった。
3番で、10メートルのバーディパットを決めた。拍手と歓声に軽く手を上げ、悠然と応える中嶋。
「今日は18ホール、いいかげんに打ったショットは一発もない。一発も粗末にしていない。ほんとうに、一生懸命、やれてるんだ」と、満面の笑みを浮かべた。

今週、中嶋も、“マスターズ帰り”の第1戦だ。
テレビ解説としてオーガスタ入りし、ロープの外から劇的瞬間を眺めた。
その様子を語る、中嶋の声が上ずる。
「15番で、ミケルソンがイーグルを狙う気迫に、タイガーが気圧された。それまではジャストタッチでパットを決めていたのに、ミケルソンの頑張りに圧されて、無意識に答えてた。そういう瞬間を間近で見て・・・もう、解説そっちのけで見入ってしまった。本当に、すばらしい試合だった」
1週間がすぎても、中嶋は、まだ余韻にひたりきった表情をしていた。

ただ、残念なのは、世紀の瞬間ともいえるその光景を、同じ土俵に上がる選手として見られなかったことだ。
「試合はすばらしかったけど、終わってから、もう、ここには、選手として以外では来たくないなあ・・・と正直、思った。あそこは、ロープの外から見る世界じゃない。(選手として)“やるところ”なんだと、つくづく感じだよ」
オーガスタで感じた興奮と、もどかしさが、今の中嶋の原動力となっている。

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