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PGAフィランスロピー 2000

「いちびると、ダメなんです」

上出裕也は、デビューした86年からこれまでに1年間だけ、賞金によるシード入りをしている。94年、ゴルフダイジェストトーナメント2日目に首位タイに立つなどして、賞金ランク62位に。しかし翌年すぐにシード落ちをし、ツアー競技での予選通過は、98年のKBCオーガスタ(51位タイ)以来のこととなる。
それだけに、インタビュー席に座って「こんなところ来るの、久しぶりです。…ええモンですねぇ」と、思わず笑みがこぼれるのも無理はない(=写真)。

6つスコアを伸ばして通算9アンダーにしたとたん、急にまわりがざわめき出した。
「あがり4ホールからついてきた」というカメラマンたちにしきりにシャッターを切られ、「あんなこともずっとなかったから慣れてないもんで、なんかどきどきしてしもて…」と上出。緊張しながらも、最後の18番は1.5メートルのバーディパットをきっちり沈め、通算10アンダー、首位浮上だ。
「こういう試合で、こんなところまで来れてホンマに嬉しいです。試合に来ているんだっていう感覚が蘇ってきます。少年に戻ったように、嬉しかったです」と感激しきりだった。

コースにほど近い、京都市出身。久しぶりの最終日最終組にむけ、意気込みを独特の関西弁で語った。「明日は、いちびらんように…」
“いちびる”とは、度を過ぎて調子にのる、とかふざけるとかいう意味だ。
「性格的にいちびりなもんで(笑)。でもいちびったときに限ってあかんのです。ショットも飛ばないしね。最終日は、コースの幅に集中しながら1打1打、丁寧に打っていきたいですね」と、思わずゆるむ口元をひきしめ神妙に語っていた。

★ 上出裕也のはなし
「今年になって三菱自動車トーナメントからツアーに出ているんですけど、全部、1 打とか2打で予選落ちしてるんですよ。そんな感じで来てたんで、今週もスタートする前は、それだけが嫌だったんですよ。また1打差とかそんなんで落ちるのがね。カットラインはどうせアンダーパーになるやろうし…って、そっちのほうを心配でした。でも、前半のハーフで(3バーディを取って)その不安がなくなって、わりかし(割りと)気楽に回れました。そうしたら結果的にこんなふうになったという感じ。誰が今トップだとか、全然そんなの気にしてませんでしたね。
ただ、6番あたりでカメラマンの人たちが来て、ドキドキしてなんかおかしいなったけど…最後の9番は、残り108ヤードをアプローチウェッヂでしっかりと打ちました。久しぶりにこういう試合でこういうところに来れて、ものすごく嬉しかったです。率直に、若手と一緒のような感覚といわれるかもしれないですけど、ものすごく嬉しかったんです。
64というスコアは、トーナメントでは自己タイです。トップタイは…ずいぶん前のことなんで覚えてないですわ。
今年からホンマと契約させてもらってるんですけど、ドライバーがいいですね。先週は予選落ちはしましたけど、先週、計っていたドライビングディスタンスは2日間トップだったんです。かなり飛ぶようになってるんじゃないですか? 試合に出てなかったんで、比較するすべはなかったんですけど、先輩の中村(通)さんや井戸木(鴻樹)さんと一緒にまわらしていただいたときに、『飛んでるな〜』って言ってもらいましたしね。ドライバーがけっこういいみたい。でも、性格的にいちびるとダメ。飛ばなくなるんです(笑)。
先週まではラフがきつかったんでつらかったですけど、今週はそれほどでもないんで計算しやすいですね。試合経験があまりないもんで、ラフがきついと(ショットの距離感が)計算しづらいんです。
明日はとりあえず、いちびらんように、1打1打丁寧にプレーすることを心がけるようにします」

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