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ゴルフ日本シリーズJTカップ 1999

連載「ツアーを支える人々」

選手をサポートする『プロサービス』という仕事がある。これはわかりやすく言えば、ツアーに参加する選手の宿泊、交通の手配から、ボール、ウェア、グローブなどの支給、クレームの処理など、身の回りの世話を一手に引きうける係といっていいだろう。

今回はスポーツメーカー『ミズノ』のプロサービス担当、有本圭志さんにこの仕事の醍醐味と、苦悩を聞いてみた。

有本さんのもとには、選手からさまざま相談事、悩み事が舞いこんでくるが、それは何もゴルフに関することだけではなく、個々の人生相談にまで応じなくてはならないときもある。「ボクの立場では非常に応えにくいことも、相談してくれる選手もいます。内心、『こんなことまでボクが立ち入っていいのか』と悩むこともありますが、信頼してくれる気持ちを踏みにじりたくはない。

どんな内容にも自分の言葉で、率直に応じるようにしています」と有本さんはいう。

そんな誠実な姿勢が、選手たちの有本さんへの信頼を、さらに深めるのだろう。

今シーズンの有本さんには、“嬉しい悲鳴”をあげる場面が多かった。

というのも10月のフィリップモリスでは、川岸良兼と桑原克典が、そして11月のカシオワールドオープンでは米山剛と手嶋多一が、優勝争いをしたからだ。

どちらも、同社の契約選手。有本さんにとってはその全員が「大切な、思い入れの強い選手」なのだ。

有本さんは、契約選手が優勝争いや上位争いを展開しているときは、必ず、その選手のラウンドについて歩き、陰ながら精一杯のエールを送っている。

「プレーをするのは選手。僕がついて歩いても、何ができるわけでもないんですが…」(有本さん)とやはり、川岸と桑原がV争いをしたフィリップモリスでも、最終日に2人の組にぴったりとついて歩き、2人の打つ1打1打を見守る有本さんの姿があった(=写真)。

このとき、川岸良兼には95年のJCBクラシック仙台以来、5年ぶりの復活優勝がかかっていた。「川岸さんの苦しんできた年月を考えると、今回はやはり川岸さんに勝たせてやりたい、という思いはありますけど…でも、桑原さんにだって優勝してほしい。…一体どっちを応援したらいいのか、本当に複雑な心境です…」と有本さんは、苦笑していた。

その思いは、カシオワールドオープンのときも同じだった。

しかし、この悩みは、選手をサポートする「プロサービス」という仕事にとっては、大変、贅沢な葛藤だといえるだろう。

「…結局、どちらが勝っても、嬉しいんです。誰が勝とうと、選手の喜ぶ顔を見るのが、ボクの最大の喜びです」5年ぶりの優勝カップをかかげる川岸を見つめながら、有本さんはそういって、穏やかな笑顔を見せた。

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