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スーパーマリオよみうりオープン 1999

最終日だけで10アンダー、田中秀道

最終18番ロング(554ヤード)。渾身の力を込めて、第2打でグリーン右エッジまでボールを運んだ田中は、慎重に残り13メートルのラインを読んだ。
 これを入れれば、通算11アンダー、61。この時点で、トップの金鍾徳は通算17アンダーをキャッチ。優勝のチャンスも出てくる。
 だが、キツいフックラインのイーグルパットは、カップまで1メートル手前で止まった。「ここでイーグル獲ったらなんか(優勝とか)あるのかな、と思ってセカンドショット打ったのですが、エッジからのパットをショートさせてしまったのは今後への、嬉しい課題ですよね」
 
 2番ロングでバーディを獲ってから、5番、7番、8番でもピン上2メートルを入れて前半4つのバーディ。通算5アンダー、20位タイスタートの田中の名前が、スコアボードをかけあがっていく。この時点で通算8アンダー。
 「8番で4つ目(のバーディを)を獲って、びっくりしてしまって、9番のイージーロングをボギーにしてしまいました。4つも来て、前向きになりすぎたんですね。9番も獲ったら2桁になるという気持ちで、簡単に攻めてしまった」
 しかし、すぐに気持ちを切り替える。
 10番、左にドッグレッグした難易度3位のミドルホールで5メートルに乗せてバーディ。
 11番ではピン上8メートル、12番は残り135ヤードを9番アイアンで3メートルにつけて3連続バーディだ。
 「10番は、狭いんだからスプーン握って、ロングアイアンでしっかり寄せてパー獲っていけばチャンスはある、って気持ちを切り替えました。今思えば、9番のボギーがあってよかったんです。『簡単にボギー打つようじゃ、(この好スコアは)まだホントじゃないって気持ちを引き締めることができたんです。
 3つ連続で獲ったあとは、13番(ショート)寄せワンでビビりながらも安全に1メートルに寄せてパーセーブしたとき、『いまのスコアをキープしたい』と思っている自分がいるな、と思いました。
 このままでは、12(アンダー)くらいで終わってしまうな、と。
 ここまできたら、自分のできることを残り5ホールでしなければいけない、と。優勝を意識していけばいいんじゃないか、と思った。しがみついてスコアを獲っていけばいいんじゃないか、と」
 15番ミドル。第2打をピッチングウェッジでピンまで15メートルにつけ、これを沈めてバーディ。
 「きょうはパターにつきます。ラインが見えた。それにストロークが噛み合った。 3パットするかも、というような気持ちがおきなかったから。気持ちよく打てた」
 
 上がり3ホールもバーディで締めくくり、通算15アンダー。首位の金には結局、3打及ばなかったが、猛烈な追い上げに、18番スタンドの観客の拍手は鳴り止まなかった。
 田中はボールを高々と、その歓声の中に放りなげた。
 「アメリカの(メモリアルトーナメント、予選落ち)速いグリーンに悩み、全米オープンのマンデーでは、ガラっとかわってそれほど速くないグリーンに合わせきれず、帰国して、今大会の堅くて速いグリーンに合わせきれなかった。
 どんなグリーンにも合わせていくのが本当なのに、それが出来なかったんですね。
 即座に対応しきれなかったことが反省点でした。
 球筋も、持ち球のドローが世界では通用しないことを思い知って、フェード球の習得に励んでいたけれど、スコアが出だしたら、自分のいいときのゴルフに突入しなくてはいけない。だから、今日の流れなら、比較的、得意なストレート目のショットで行こう、と切り替えました。球が、出足でまっすぐ出せるように縦に振るイメージで。
 もうすぐ全英オープンが控えていますが、それよりも今は目先の2、3週間(日本ツアー)をなんとかすることしか頭にないです」

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