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鬼の帰還。キョンテが1年ぶりの復帰で一番嬉しかったこと

鬼の異名を持つ男の静かな微笑みは、苦難を乗り越えなおいっそう深かった。

 

金庚泰(キム・キョンテ)が帰ってきた。

 

プロ転向の2007年に母国韓国ツアーで新人・賞金王に輝き、日本ツアーは08年から参戦して通算14勝。2010年に韓国勢初の賞金王に就くと15年に、2度目の戴冠。日韓両ツアーで無類の強さも、コロナには勝てなかった。

 

「去年は本当にいろいろありました」と、激動の1年を静かに切り出した。

 

罹患は昨年、日本ツアーが明けたばかりの4月。試合を棄権してすぐに入院した。

41度の高熱に5日間もうなされ、平熱後に今度は肺炎を併発し、退院まで20日もかかった。

 

5月にやっと韓国に帰国できたが、入国時の検査で再び陽性反応を示して、今度は母国で再び10日間の隔離を余儀なくされた。

 

「本当に、ゴルフも、何もできなかった」と、体力も飛距離も、体重もどんどん落ちて、10キロ減。一時は65キロを切った。

 

それでも無理をして、韓国で4試合に出場したが、コロナ後の後遺症か、ひどいめまいに悩まされて、うち2試合で初日に棄権。

当時はプレーどころか歩ききる力も残っていなかったという。

 

やっと体力の完全回復を実感できたのが昨年末。今季の国内初戦「東建ホームメイトカップ」に合わせてさあ、来日準備をというときに、今度は練習ラウンド中に左あばらを骨折。

 

「治るのに4週間かかって、日本に来るのがさらに遅れてしまいました…」と、今週からようやく合流。丸1年ぶりの日本ツアー初日は1バーディ2ボギーの「72」を叩いた。

 

1オーバーの123位と大きく出遅れたが、度重なる不運からいま立ち上がったばかり。

まずは18ホールの完走が目標という庚泰(キョンテ)にとっては「思ったより良かったですよ」と、静かに微笑んだ。

 

アマチュア時代に、あまりの強さに韓国でついたニックネームが「鬼」。

2019年にツアー通算14勝目を飾った「カシオワールドオープン」での複数年シードは今季いっぱい使える。

今年1年かけて、元来の強さを取り戻していく。

 

鬼の強さとうらはらに、いつも穏やかな笑みを絶やさぬ人格者には、選手の中にもファンが多い。

留守の間に、「日本ツアーも若い選手が増えて知らない子がいっぱい」と“浦島太郎”を笑ったが、1年ぶりの帰還で何よりの喜びは、旧知の選手たちから温かな歓待を受けたこと。

「それが、本当に一番嬉しかったんですよ」。しみじみと言った。

 

おかえりキョンテ

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