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パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ 2022

「ゴールはない、っちゃない」桂川有人の流儀

中島啓太が1番ホールでデビューの第1打を打ったころ。ちょうど入れ替わりで、最終ホールに戻ってきた。

18番の第2打は、178ヤード地点の刈り込みから6アイアンでピンそば1メートルに。

桂川有人(かつらがわ・ゆうと)がバーディ締めで、初日にボギー無しの「65」。
今平周吾と並んで首位に立ったが「自分の中ではミスを怖がり合わせている部分がある。結果良し、という感じではない。明日も同様にできるかどうか」と、2日目以降に課題の残る内容ではあった。



「ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!」でツアー初優勝を飾り、一時期賞金1位を走ったが、初連戦の疲れからか、夏場以降は20位前後が続いて、先週の「ANAオープン」は予選敗退。


大会優勝の大槻智春にランキングで抜かれて3位に後退したが、特段気にしていない。

現在、パーオン率と、飛んで曲がらない数値を示すトータルドライビングで1位を走るが「そうなんですか…」と、データへのこだわりもあんまりない。


「初優勝も勿論嬉しかったですし、自信にはなりますけど、自分はけっこう忘れるというか。悪い時はもちろんですが、いい時を引きずるのもあんまりよくない、と思っていて。すぐにリセットします」という。


過去と同時に未来にも拘泥しない。

「目標も大事ですけど、結果にこだわりすぎるのも良くないと思っていて。目標を決めると先にそっちに意識が行っちゃうじゃないですか。だから、自分はいつも目標を決めないのでゴールがないっちゃない。自分に限界を作らない」。

物腰はいつも柔らかだが、それが桂川の曲げない流儀だ。


この日初日は、地元名古屋の同い年で、ジュニア期から親友の大西魁斗(おおにし・かいと)が、今月の「フジサンケイクラシック」で初優勝を飾って以来の同組ラウンドだった。

勝利の瞬間は、桂川もお祝いの水掛けに参加したが、プレー中はそんなこともなかったかのように、お互いいたって普段通りだった。




「特に優勝時の話しはなかった」といい、「僕らの世代はみんな松山さんみたいに世界へ、ってなってると思うんです。だから、優勝して嬉しいよりも、早く優勝しないといけなかったのにやっと優勝できた…という感覚じゃないか」と親友の心情も合わせて想像し、「カイトくんは元々アメリカにいたし、これからどう考えているのかな、というのは気になって、僕も聞いたりします」とラウンド中の話題も互いの将来がもっぱらだった。


日大先輩の小平智がいったん戻った先週も、積極的に米ツアーの現状を尋ねに行った。

今季開幕時は、桂川も日本の賞金ランキングの資格で米二部ツアーのファイナルQT挑戦を目標にしていたが、小平には「いろんな道があるよ」と、言われたという。


たとえば、来月の日本開催の米「ZOZOチャンピオンシップ」。「そこで勝っちゃえばいいんだよ」とは、なんとも小平らしいアドバイスである。スポット参戦でも、秋の入れ替え戦に潜り込めるチャンスはある。海の向こうで孤軍奮闘を続ける先輩に、より広く視野を持つことを教えてもらった。


今週は、中島啓太がアマVを達成した大会でデビュー戦を迎えたが、「男子ツアーも若いからとかいう感覚がなくなってきているのじゃないか。ケイタくんの活躍も、刺激にはなりますけど、これから当たり前になってくるのじゃないか」と、平静に受け止めて我が道を行く。

「僕はたまたま1勝できましたけど、だから上手いってわけじゃない。ほんと、まだまだダメな部分が一杯あるので。これからも1打1打を頑張って、この調子で頑張っていこうという気持ちです」と、初日の好発進にも一喜一憂することなく前を見据えた。

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