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〜全英への道〜ミズノオープンatザ・ロイヤル ゴルフクラブ 2019

おかえり、チャン・キム

怪物並みの飛ばし屋が、怪物コースで表舞台に戻ってきた。
韓国系米国人のチャン・キムが、「ずっとこの日を待ち望んでいました。
前のティを使った予選の2日間は、一緒に回った池田と共に「なんで8000ヤードにしないんだろう?」と、残念がった。
「前のティだと僕は逆にハザードにつかまる。お互いティが後ろのほうが、有利になるね、と」。

最後方のティを使っていよいよ8016ヤードにセッティングされたこの日3日目こそ、池田と話していたとおりに怪物級の飛距離を生かして本領発揮だ。

705ヤードもある16番パー5では、1打目を350ヤードも飛ばした。
首位を快走した池田に負けじと史上最長コースで69で回った。
開催コースは違えど一昨年(岡山県JFE瀬戸内海GC)に、初優勝を飾った思い出の大会で、改めて今季のツアー復帰を喜んだ。

異次元のその飛距離はファイナルQTランク1位で転戦を始めた2014年から、周囲の度肝を抜いた。
いくら飛ばしに覚えのある選手もキムのショットを見れば、尻尾を巻くしかなかった。

豪打を駆使して2016年に初シード入り。
年間3勝を飾って賞金王を争ったのは2017年。
悲劇はその年末に起きた。

シーズン最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップの2日目に、腰痛で棄権。
痛みも言えないまま翌年の昨春にはWGCメキシコ選手権の練習時に、木の根元からのショットで、今度は左手首を骨折。

どうにか手術はまぬかれたが、完治に5か月かかった。
リハビリには、さらに半年。
ようやくクラブを握ったのは、今季海外初戦の「SMBCシンガポールオープン」を2週間後に控えた頃。
「12歳からゴルフを始めて、これだけ長くゴルフしなかったのは初めてでした」。
米アリゾナでの自宅療養を強いられた際は、「精神的にも参りました」。
くじけかけた日もあるが「休んでいる間も、優勝争いの興奮が忘れられなかった」。

必ず戻ると信じて、再びチャンスにこぎつけた。
「今年の開幕戦(東建ホームメイトカップ)では、とにかくここに帰ってこられただけでも幸せだと思った」。

腰はまだ痛むことがあり、「好不調の波は激しい」と、本調子とは言えない。この日は後半4つのバーディで魅せるなど、史上最長といわれるコースで再び自慢の飛距離をアピールできる。
「ここは誰でもいいスコアが出ると思うので。明日はアグレッシブに行きたい」。再び最終日最終組でぶつかる池田と、胸のすくV争いを繰り広げる。

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