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関西オープンゴルフ選手権競技 2018

中嶋常幸が今季初戦

63歳は義理堅い。「いったん交わした約束だから」。体が許す限りは、守りたいのだ。
09年に、レギュラーツアーとして復活した歴史と伝統の今大会に、中嶋が初出場を果たしたのは2014年。
当時、80回記念大会に「ぜひ、花を添えて欲しい」と主催者からオファーを受けて「もちろん、私に出来ることならご協力したい」。
二つ返事で駆けつけてからは、どうしても体の調整がつかなかった昨年大会をのぞいて毎年、エントリーを続けてきた。

「今年も・・・ダメだね。体はボロボロ」。
13年に手術をした左膝は特に最近、古傷がうずくようになった。
「競技という意識を持ちながら、レギュラーツアーに出るのは、今年限りと思っている」と徐々に気持ちの整理をつけながらも「出る限りは最後まで、しっかりと回りきる」と、今年も執念の出場を決めた。

会場入りしてすぐ、後輩の偉業をたたえた。
「谷口、カッコ良かったぞ!!」。
尊敬するレジェンドに褒められ、嬉しそうなその顔をしみじみと見ながら「お前もあともう少し、頑張れ!」。

中嶋がレギュラー最後の優勝を飾ったのは、2006年の三井住友VISA太平洋マスターズ。
「52歳だった」。
そして、あのとき中嶋に次ぐ2位につけたのが、谷口だった。中嶋自身も時の流れを噛みしめながら、「あのときの俺の年齢までお前もあと2年。頑張っていけ」と、エールを贈った。

3度目のプロ日本一で、5年シードを得た谷口だが「あと5年も出続ける自信がないと言っていた。その気持ち、俺もすごく分かるよ」。
若いころと同じようにはいかない体と心。
中嶋も嫌というほど味わってきた。
この日の練習ラウンドだけでも、もう萎えそうだった。
「一緒に回った子に、50ヤードも置いて行かれて。俺もう帰るわ、と」。いじけて、本当にそのまま、切り上げて帰りたくなる思いをぐっと堪える切なさ。

「前はあんなことも、こんなことも出来たのに、と。老いを感じる。俺たちにはそういうジレンマとの戦いもある」。
そんな中で優勝を勝ち取る喜びもまた、若い頃とはまた違った感慨がある。
「若い子の活躍ももちろんだけど、ベテランはベテランでイイ味を出してくれるもんだよね」と、しみじみと「俺も、応援してくださる方がいる限りは頑張るよ」。
ツアー通算48勝は、今季の自身初戦で63歳なりの貫禄を出したいとは思っている。

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