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HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP 2017

若手台頭の中で光る、手嶋多一の存在感

この日最後の18番もバーディで締めくくり、報道陣に囲まれている間に、背後にしのびよる手嶋のキャディさん。足下に、ピカピカの革靴が置かれた。スコア提出所のすぐ横には、駐車場。

「みなさんにお話したら、すぐにこっから帰ろうと思って」と悪びれず、そのあとインターネット中継のブースに数分座ると、ロッカーにも立ち寄らず、本当にさっさと帰っていった。何度も言うようだが、手嶋が練習しない噂は本当だ。

「神経質なので。練習すると、考えてしまうので。球は打たない。帰って部屋でパターを転がすくらいで、風呂入って寝ます」と、夜8時にはベッドに入り、近頃夜中の2時ごろ目が覚めるのは悩ましいがそれでもその時点で、しっかり6時間は寝ている。
「身体のケアも、特にしない」と、疲れた身体も人には指一本触れさせないのも、プロ24年のベテランが頑固に続けてきた日々の営みだ。

先週は同じミズノ契約の小鯛竜也が初優勝を飾った。
「若いのに、求道者みたい。すごくストイックに練習するし、必ず勝つと思っていた。この先きっと、2勝3勝とする選手」と、目を細める。

先々週にはツアー2勝目を飾った時松は、手嶋に感謝した。試合で一緒に回った時に、今季からフリーで戦う時松の、あまりのドライバーの不振に見かねて、「使ってみれば」とミズノ社のクラブを勧めたところ、あのような形になった。

「僕たちが頑張っても盛り上がらない。若い選手たちには頑張ってもらわないといけない」と、言いながらも今週はまた、首位と1打差の単独2位で光る49歳の存在感。

長くやる秘訣は「目立たず、ケガをせず、練習しない」と、大まじめに「僕みたいにもうすぐ50歳の選手が20歳の選手と一緒にやれる。ゴルフのいいところ。でも僕なんか、すぐ負けるけど」とからからと笑いながら「そこそこ頑張ります」。

プロ初優勝は99年に、今大会会場近くで行われた「ファンケル沖縄オープン」だ。あれから18年を経た今も、堂々と第一線にいる。思い出の地で、虎視眈々と2015年のミズノオープン以来のツアー通算9勝目を狙う。

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