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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2016

ハン・リーがコース新を出して涙

コース新の63を出して上がってきた時に、バイザーで顔を覆ったのはこみ上げてくるものを、隠したかったから。どうにかこらえてスコアカードを出したが、そのあと報道陣に囲まれて、第一声は言葉に詰まった。

ぷるぷると震えだした唇。とうとうあふれ出た涙。「スミマセン」。嬉しくて・・・。「またこんなに良いゴルフが出来るとは、思っていなかったので・・・」。大粒の涙を大きな手でぬぐった。

一昨年の末は、歩くのも困難なほどだった。身長190センチに91キロの体重を支えてきた左膝が、悲鳴を上げていた。その年は執念で、賞金ランク44位につけたが、もう限界だった。長期離脱を覚悟で、12月に手術を受けたが、その後3ヶ月はカウチに座ったきりの生活。
昨年の4月から、ようやくトレーニングを再開したが、今度は右足を負傷。患部に添え木生活で、いたずらに日は過ぎていった。

やっとクラブが振れるようになったのは、昨年の11月だ。そして丸1年の休業を経て今季は、試合中の怪我を公傷とみなす特別保障制度の適用を受けて、復帰を果たした。
おいおいと泣きながら言った。
「また試合に出られるようにしてくれたJGTOのみなさん、ありがとう」。
復帰戦となった今年の国内開幕戦「東建ホームメイトカップ」の会場で、「おかえり!」と迎えてくれた選手たち。「・・・嬉しかった」と、また涙ぐむ。
プロ仲間どころか、ギャラリーの方ですら「久しぶり!」と声をかけてくださった方もいて、「ホント、びっくりした!」と、泣きながら笑った。

300ヤード超えの飛ばし屋が、一時は220ヤードしか飛ばなくなった。
初戦は、久しぶりの実戦にシャンクを7回もして、「力が入っていた。ゴルフはホント難しいと思った」とブランクを実感して、2012年に1勝を挙げたツアーでまた優勝争いが出来るようなゴルフが出来るようになるのか、不安だった。

「こんな良いスコアで回れたなんて、信じられない。またこんなゴルフが出来るようになって、本当に嬉しいです」。
63は、5打差からの大逆転Vでツアー初優勝を飾ったマイナビABCチャンピオンシップの最終日にも出した自己ベストタイスコア。
持ち前の爆発力の復活を、仲間たちに労われてまた泣いた。

週末限定でコンビを組んだ恩人にも感謝の気持ちを禁じ得ない。プロキャディの月森洋二さんは今週、デービッド・オーのバッグを担いでいたが、オーの予選落ちが決まった際に、「担いで欲しい」と頼み込んだ。

怪我をする前は、よく月森さんに担いでもらっていたが、今年は自分がちゃんと試合が出来るかどうかも分からないのに、専属で雇うことは出来ないと、ほとんどハウスキャディにお願いをしていたが今週は、どうもウマが合わずに困っていた。

月森さんに依頼をして、正解だった。10番で、残り115ヤードのセカンドで、ピッチングウェッジを持ったリーに「ここは9番でしょう」と、月森さんの忠告を聞いて本当に良かった。ピンそば30センチについた。「洋二、ありがとう」と心から言った。
月森さんも「怪我をする前より、ショットが良くなっている」と、確かな手応えであれよあれよと、リーダーボードを駆け上がった。
最終日を前に、単独4位に浮上したが「こんなに高いレベルでゴルフが出来るというだけで、嬉しいので」。無欲の最終日に、再び大逆転のツアー2勝目なんてことになったら、それこそ涙が止められなくなりそうだ。

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