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フジサンケイクラシック 2015

連覇を狙った岩田寛が最終日の猛チャージ

逆転連覇のチャンスはあった。13番から4連続バーディで迎えた17番パー5は、241ヤードの2打目をクリークで、奥1.5メートルのイーグルチャンスだ。

決めれば首位に1打差まで詰め寄れる。「これが入っていたら、18番も獲ってやろうという気持ちになっていた」。

ヒロシが、がぜん燃えた大事な1打。しかし「目の前の1打が上手く出来なかった」。土壇場で付けいる隙を見せた韓国の鬼。「まさか、キョンテがこんなに落ちてくるとは思わず」。最終日に4つのボギーで苦しむ金庚泰 (キムキョンテ)。

そんな姿を見るのは初めてだ。信じられない思いで打ったこの絶好のチャンスをヒロシはみすみす逃してしまう。
そして最後の18番は、ティショットを左へ。山なりのラフの上から打った2打目を今度は右の群衆の中に打ち込んだ。木に当たったボールはその下で観戦していた山梨県富士吉田市の、真田桂子さんが座っていたレジャーシートのそのまた上に敷いていたタオルの上にぽとりと落ちた。

競技委員を呼んで確認した岩田。
「そのまま打ってもいいですか?」。
「なんで・・・?!」と、小さく叫んだのは真田さんだ。
「どかせられないの? あんな上から打たなくちゃいけないなんて可哀想!」と、悲鳴を上げた真田さんにことわってから、迷わず58度のウェッジを握った岩田。

「あんなところに座っていて申し訳ない」と、逆に真田さんは恐縮していたが「(シートを)どかすとラフなので、低くスピンをかけられないし、上には枝があったので。タオルの上からだったらスピンをかけられるかなと思ったので」と、プロの冷静な判断力には、真田さんも感心しきりだった。

わずかにグリーンの奥にはこぼしたが、シートとタオルごと飛ばしたピンまで40ヤードの曲打ちは、「本当に素晴らしかった」と、真田さんは感動していた。最後はボギーに沈んだヒロシは「今は悔しすぎて、大声出したい」。連覇を逃したのは本当に残念だが、「今日の悔しさを、次に活かすも殺すも自分次第」。

翌7日月曜日には、渡米する。昨年11月の世界ゴルフ選手権「HSBCチャンピオンズ」で3位に入り、来季の米ツアーの出場権をかけた全4試合の入れ替え戦「ウェブ・ドット・コムツアーファイナル」の出場出来ることになった。
海の向こうの活躍を、日本で応援してくれる人たちが大勢いる。
「前から素晴らしいプレーをする選手だと思って見ていましたけど、今日のあのショットを見て、ますますファンになりました」とはレジャーシートの真田さんだ。「アメリカでのご活躍を、心からお祈りしています」(真田さん)。
声援を背に受けて、ヒロシが旅立つ。

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