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藤田寛之が大会3勝目【インタビュー動画】

最終日は本人が言っていたとおりの展開になった。ここ山の原は「最後の5ホールでいかようにも変わる」。44歳のベテランには始めから、筋書きが見えていたかのような稀に見る大混戦は、自ら足を踏み込んだ感もあるが、大会2勝の実力はダテじゃない。2010年と2012年の覇者が、このほど再び2年ぶりに山の原を制した。B・ジョーンズに並ぶ最多の大会3勝目で藤田が新たな伝説を完成させた。

3番では2打目がディボット跡の不運も10メートルをねじ込むなど、3つのバーディで「前半は100満点」。完璧なゲーム運びで頭一つ抜け出しながら、「11番でやらかした」。グリーンの奥に打ち込んだパー3は、深いラフからのアプローチ。「強めに入れなければいけないのに緩んだ」と、あとでキャディの清水重憲さんにつぶやいた。
「確かに藤田さんらしくないミスでした」と、清水さん。「でも藤田さんは、表情ひとつ変わっていないように僕には見えた」。

2007年に谷口徹と女子の上田桃子さんの賞金1位を支えた敏腕キャディだ。歴18年の40歳。その道のベテランですら、藤田の強心臓ぶりには舌を巻く。「ダボだけじゃない。前半で3つバーディを取った際にもいつもとリズムが変わらない。V争いでは少なからず速くなったりするものですが」。
もっと言えば、「初日から最終日まで、1日の過ごし方もまったく同じ。朝起きてから練習場に向かうまでの時間配分も何もかもです」。
途中、ハシャいでガッツポーズをすることもない。よくあるキャディとのグータッチもなし。3人タイで並ばれても、谷原や朴の逆襲にあっても、一時は2打差で突き放されても、どこまでも淡々とプレーオフに持ち込んだ。

16番パー3で、7か6Iで迷っていたティショットは「神風が吹いた」と清水さん。
にわかな追い風に、7アイアンであわやホールインワンのピンそば50センチで再び首位を捉えた。次の17番パー5は、ラフからの2打目で池越えの2オンを狙うか刻むか。「どう思う?」と藤田。「最後まで、面白くしませんか?」とやんわりと、リスクを避けてレイアップを勧めた清水さんとはこれが初タッグにも関わらず全幅の信頼で、提案に従う柔軟さも見せて3打目狙いのバーディこそ逃したが、手堅くパーで上がって、朴相賢とのサドンデスも清水さんの表現が、言い得て妙だ。
「すっと行って、すっと勝った」と、1ホール目にあっさりと、まさに貫禄勝ちだった。

賞金王として迎えた昨シーズンは、2度目のマスターズを見据えて「突っ走ってケガ」。2月に右脇腹の骨折で練習も出来ず、スイングのイメージも作れないままオーガスタに乗り込んだ。「過酷な条件の中で、空中分解してしまった」。その後遺症も思いのほか長引いて、「ケガのブレーキは、本当に怖いと思った」。

苦い思いがこのオフも、藤田を例年以上に突き動かした。「練習も、トレーニングも休むことなくやる必要がある」とストイックにシーズンを迎えてなお今週も毎日、宿周りで欠かさなかったというランニング。
「それはある意味、当たり前のことであって、そこを凄いことのように言うのが変というか、僕は嫌」。
この春のウェアはあらかじめ、メーカーに頼んでさらにスリムに絞ってもらった。「走るのは、お腹周りのためでもあります」と、そこはちょっぴり照れ笑いで「頑張りました」と満足そうに、今や体脂肪率も11%を切るという。
加齢による視力の低下も隠さず、年齢との戦いも赤裸々に、「僕も日々苦しんでいるし、その中で勝利した姿を同世代の人に見てもらって、自分も頑張らなきゃと共感してもらえることが嬉しい」。それも大きな原動力に「今年も2度3度とこのような姿を見せていきたい」。

ツアー通算16勝は、40歳以降の勝ち星なら10個目。ジャンボの63勝と杉原の21勝、青木の18勝に続いて尾崎直道と並ぶ歴代4位タイの偉業に「憧れの先輩方と肩を並べた自分が信じられない。でもネームバリューを含めて自分はまだまだ。もっともっと追求していきたい」と、年々その欲望は枯れるどころか、高まっていくばかりだ。
6月には45歳。「サラリーマンなら会社を背負っていく世代。僕はゴルフで頑張っています」。そろそろシニア入りも視野に入れる年齢を控えて、「マスターズにも、みたび挑戦してみたい」と2度ともあんなに打ちのめされてもこの人は、やっぱりちっとも懲りていない。



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