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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2012

川村昌弘は、なるか史上4人目の10代チャンピオン

かつてもたびたびツアーの舞台となったここ東広野ゴルフ倶楽部だが、今年デビューしたばかりのルーキーには、どの開催コースもほとんどが、初めての体験だ。

それでも今年すでにさっそくシード権も手中にした19歳は、難しいと言われるコースでこそ、力を発揮するようだ。
「今週は、火曜日の夕方にコースに来て、水曜日に初めて1ラウンドを回った」。
たった1回だけで、特性をつかんだ。
「フェアウェイの刈り高も揃っていて、ティショットから組み立てていける。ドライバーを使えるホールが少ないというのもいい。得意というか、好きなコース」との好感触は、しっかりとスコアに出ている。

日に日に速さを増すグリーンも「徐々にタッチが合ってきた」。
火曜日に新しくしたパターは「流行りの丸くて太いグリップ。気分転換で変えてみたら、良い感じだった。ぎゅっと握らないので」と力みもなく、柔らかく握れる感覚も今週の高速グリーンにマッチした。

前日は65で8位タイに浮上すると、この日も「グリーンで大オーバーも、ショートもなく。ほとんどお先にが出来て良かった」。8番では、2打目がマウンドの頂上に立ったピンに絡んで、2メートルのバーディチャンス。
13番では、奥のエッジでパットを握った8メートルのバーディトライも決まった。

予選2日間でともに回ったアマチュアの小袋秀人さん。今年の日本アマの覇者が、川村について、感心しきりで言ったという。「ショートゲームが昔と全然違う」。つい1年前にはナショナルチームで共にしのぎを削った一員が、高校卒業と同時に早々とプロ転向を決めた一番の理由もそこにある。

首位と2打差の3位タイは、やはり難コースで知られる宍戸ヒルズカントリー倶楽部が舞台の「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills」に続くV争い。しかし、前回もそうだったが、この新人に気負いはまったく見られない。

「あのときも満喫しました。緊張して手が動かない、ということもなく、雰囲気を楽しむことが出来た。今回もあのときと変わらない」。
父親の昌之さんが、血液型を例に挙げて笑って言う。「あいつはA型なんですが、僕がO型。良い意味で考えすぎない性格。僕に似たんでしょう」。

ここ数試合は、予選を通過しながら平凡な成績が続いたが「ただかみ合わせが悪かっただけ」と、思い悩むこともない。練習場で、スイングにあれやこれやと試行錯誤することもない。今週は、前日2日目にもホールアウト後の練習グリーンで「3球打って。良かったから帰ろう」と、リュックを背負って早々と宿に帰ってしまった。

ツアーに帯同するフィットネスカーで、近頃よく顔を合わせる同世代の石川遼に、悩みを打ち明けることもない。
「というか、悩みがないので。今日どうだった、と話すくらいで」。
1年目の今季の目標は「怪我もなく、全試合で元気にゴルフをすること」。そのためにもまずは1日の疲れを取るのを最優先に、マイペースを貫く。

今季はすでに獲得賞金は2400万円を越えたが、ポケットには毎週のエントリーフィーと「コンビニ代くらいしか入ってない」。まだ免許もないし、何が買いたいというのもない。
「洋服も、特に」とファッションにも興味がない。
「ずっと試合が続いているし、他のことをする時間もないので」と、いまはゴルフ一途の生活だ。

今週は、初日が母親の那緒美さんの誕生日で、「一緒にプレゼントは買いに行きましたが、何か買ってあげると言っても自分でお金を管理していないので、何とも・・・」と、苦笑いで口ごもった。

もしも、最終日に逆転のツアー初Vなら史上4人目の10代チャンピオンだが「結果を気にしてゴルフをするのはもったいない。明日もし大崩れしても、良いプレーが出来ても経験になる。それより優勝争い出来る位置で、プレーできることが大事なので」と、とことん欲もない。

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