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〜全英への道〜ミズノオープン 2012

手嶋多一はルーク・ドナルドをお手本に

40代は、不惑の年とはいっても現実はなかなかそうはいかない。今年すでに2勝をあげている藤田寛之や、いまもっとも永久シードに近い谷口徹らは希有な例であり、ゴルフ界でも多くの40代は、迷いや悩みのまっただ中にいる。

手嶋がそれに陥ったのは昨年。まず、顕著に現れたのはパッティングだった。勝ち星を重ねた30代前半は、強気のタッチが信条だった。カップの縁にぶつけて入れる。外しても、1〜2メートルをまた強気で入れ返す。
「若いころはそれが平気で出来たのに。今は怖くて打てない。年なんですね」と、笑う。

昨年は、シード権の確保を終盤まで引っ張ったのもそのためだった。アプローチにも、悪影響が出ていた。「飛距離が落ちたのを補おうと、ショットの正確性ばかりを求めた。小技をおろそかにしたバチが当たった」と、寄せきれないシーンが目立った。

そんな手嶋の目にとまったのが、欧米の賞金王だった。昨年、史上初の“Wキング”に輝いたルーク・ドナルド。「僕は飛ぶ選手より、アイアンが切れる選手が好きなので。あとは彼の粘り。最後は小技でぴたりとつけてくる。まさに理想のゴルフだった」。

ドナルドのプレーを見て思った。「俺も原点に戻ってやり直そう」。
やはり彼もミズノの契約選手と知って、小躍りした。
今季は日本プロから彼と同じアイアンをバッグに入れて、今週は彼と同じ仕様の60度のウェッジも投入した。
「今まで、58度しか使ったことがなかったのですが」。
今週は、さらに大英断がもうひとつ。
パターはデビュー以来、ピンタイプしか使ったことがなかったという手嶋は、あまりの悩みの深さに禁を破った。
前日の初日はスタートの40分前に、慌ただしくバッグに入れたのは自宅から持参した4本ではなく、ミズノの移動式クラブ工房「ワークショップカー」に置いてあったL字型。

今季も「まだ200万円くらいしか稼げていない」と、2年続けて出遅れがちなシーズンに、43歳がなりふり構わぬ策で不振脱却をはかる。ホストプロとしての恩返しと、全英オープンの出場権も頭の片隅に置きながら、2007年以来のツアー通算7勝目をねらっていく。

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