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カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2012

韓国の黄重坤(ハンジュンゴン)が完全優勝のツアー2勝目

ずっと憧れていた。18番ホールで、仲間から手荒い祝福を浴びる優勝シーン。2度目にして、夢がかなった。劇的なウィニングパットを決めたチャンピオンに向かってなだれ込んできたのは、異国での転戦で、いつも行動を共にしている先輩たちだ。

昨年は、バッグを担いで支えてくれた父親も、過酷な仕事に体調を壊して、独り立ちをした今季。「去年まではコースでも、食事も何もかもアボジと一緒でしたが」。今は気の良い仲間と、食事をしながらする他愛もない四方山話が、何よりの気晴らしだ。

「先輩たちのおかげで、リラックスして試合に臨める」。父親の付き添いがなくても、すぐに平気になった。その恩人たちが、2度目の優勝を出迎えた。もうまもなく12月の声を聞く時期の水シャワーは冷たかったけれど、最高の優勝シーンを演出してくれた。「本当に嬉しかったです」。

1打差の首位からスタートした最終日は、1番でわずか50センチのチャンスを逃し、さっそく2番では「尊敬する大先輩」に並ばれた。金庚泰 (キムキョンテ)は一昨年の賞金王が、バンカーからチップイン。対して黄は、1.5メートルのチャンスをまた外して、気持ちを切り替えた。

「今日は先輩に勝とうというより、先輩のゴルフを見て学ぶ日にしよう」。

自身2度目の優勝スピーチでは、「声が小さい」と、これまた先輩に叱られた。ドライビングディスタンス1位の小林正則とともに、最多バーディ賞受賞で表彰式に列席していたS・K・ホ。小林とともに、ゼスチャーで「(もっと声を張れ)」と、告げていた。

申し訳なさそうに言った。「僕はもともと口数も少なく、どちらかというと、おとなしい性格で」。人前でしゃべるのも、得意ではない。プレー中に、興奮して熱くなることもない。「むしろ、気持ちを抑え気味に回るようにしています」。先輩に追いつかれて内心は、動揺しても表情や態度に出ることもない。

大混戦の後半は15番で、今度は上井邦浩に追いつかれてさすがに緊張が走ったが、「他の選手のことより、今はとにかく自分のプレーに集中しよう」と、改めて心に固く誓った。
16番で冷静にバーディを奪い返して、再び1打差。

迎えた18番は、残り270ヤードからスプーンを握った2打目は「あんなに近くに寄せるつもりなんかなかった。ただグリーンの真ん中に乗ればいい、というイメージでした」と、思いがけずピンまで1メートルについたイーグルチャンスに、黒縁メガネの奥でびっくり眼に。
鮮やかな一撃で、結局4日間とも首位を譲らず3打差をつけて逃げ切った。

日本に来て2年。昨年6月にはデビューから8戦目のミズノオープンで達成した19歳での初Vは、当時は石川遼に次いで2番目となる10代の優勝だった。
シャイな性格も人気アニメのキャラクターに似ていると評判になり、じわじわと日本ツアーに溶け込んだ。良き仲間にも恵まれた2年目の今季は、先週までトップ10入り6回と安定した成績を残してツアー通算2勝目にも、「僕の実力と経験からしたら、早すぎるくらい」と、どこまでも謙虚な20歳だ。

しかし、こう見えてお酒は横綱級。韓国では19歳から飲めるそうだが、まだ“初心者”には違いない。「それでも僕らの中で、一番強い」とは、練習仲間で先輩の趙珉珪 (チョミンギュ)だ。
甘いものも大好物。帰りは、大会の最寄りの高知龍馬空港で、仲間と一緒にまずは乾杯代わりのソフトクリームをぺろりと平らげる様子は、さきほどまで激戦を戦っていた面影は微塵もなく、どこにでもいるはたちの若者に戻っていた。
  • 先輩たちに浴びせかけられた水シャワーの手荒い祝福
  • 冷たかったけど、仲間がお祝いに駆けつけてくれて、嬉しかった
  • 若いだけに、仲間内では、食欲も一番!美味しい優勝副賞が満載の今大会は特に高知県の土佐あかうしが嬉しい?!
  • 帰りの高知龍馬空港にて。リュックを下げてポテポテと歩く様子はどこにでもいるはたちの青年そのもの

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