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カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2012

谷口徹が棄権…賞金レースの行方は?!

会場にちょっとした衝撃が走ったのはこの日の朝。谷口徹が、スタート前に棄権を申し出た。初日にすでに、その兆候は出ていたが、前日は無理を押してコースに来た。

「でも、風邪の症状がだんだんひどくなって。今日は熱も出て、残り3日を戦うのは無理だと判断したようです」とは、専属トレーナーの秋山武雄さん。

目下、賞金ランキング2位は追いかける立場としては、苦渋の決断だったはずだ。まして誰よりも我慢強い44歳が、ここで試合をやめれば、より厳しい状況になると分かっていて断念したというのはよほどのこと。
「谷口さんには残念なことだったと思います」と、追われる藤田にしても、その心情は察するに余りある。

もっとも、藤田は谷口が棄権をしたことは、この日のプレーが終わるまで知らなかった。
前半が終わってインターバルで、谷口の専属キャディの石井恵可さんがクラブハウスの周辺を歩いているのを見て一瞬、「?」とは思ったが、あまり深く考えずに、後半に突入した。

11番で左奥から8メートルものバーディトライを決めると、13番では手前から10メートルの長い距離もねじ込んだ。雨風に見舞われたこの日も、きっちりとスコアを伸ばして通算7アンダーは、5位タイと順位も上げてきた。

そのあとで谷口の事情を聞いても、「僕もちょっと喉が痛くて体がだるい。ツアーでは風邪が蔓延しているので」と、その点では人ごとではないが、谷口がコースを去ったとて、藤田には何が変わるわけでもない。

奥さまの優合子さんの実家が、香川県ということもあって、久々の帰郷をかねて、この祝日を利用して今日から家族揃って応援に来てくれたが父親にはキング獲りの瞬間を、家族に見せたいという欲もない。この状況になってもやっぱり、欲しいのは賞金王の栄誉ではない。

「欲しいのは、世界ランク50位内」。それも、年末の最終週にトップ50に食い込むこと。その先には、もちろん憧れのマスターズの舞台がある。初出場を果たした昨年は「こんな自分でも、大歓迎を受けて…。もう二度とここに来ることはないだろう、と思ったけれど。今年の成績で修正することが出来たので」。

2度目のオーガスタでは、「前回を踏まえて、あそこで必要なことも分かるので」。挑戦してみたいことがたくさんある。
もちろん賞金王になれば慣例により、招待状が届くはずだが、藤田は出場カテゴリーにもこだわる。

「僕は50位内の選手として呼ばれてみたい。それが優先順位です。僕の場合は、それがかなえばあとから賞金王もついてくる、という考えです」。
頑として言った。

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