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キヤノンオープン 2011

久保谷健一、家族で掴んだ復活V

父がウィニングパットを沈めるなり、18番グリーンに一目散に賭けだしていった天祐くんと真帆ちゃん
絵に描いたような円満家族が支えたV5だった。都内の自宅はコースまでわずか30分。それにもかかわらず「真面目過ぎると息抜き出来ずにダメになっちゃう」。勝手な持論を振り回す。酒豪の夫は最初、週末の外泊を希望していたが、結局4日間とも自宅通勤。

最終日もおにぎり弁当を携えて、家族4人で会場入りだ。

しっかり者の妻・久美子さん。夫に無茶も無理もさせない。
「あの人は、家でも晩酌で最低10杯は呑む。夜中0時をさかいにコップを取り上げます」。夫が酒で失敗しないで済むのなら、「鬼嫁」と呼ばれても構わない。
「おかげでばかすか呑まないし、今週は非常に健康的でした」と感謝した夫。
9年ぶりの優勝にも「長かったとは思いません」と妻。「優勝を望んでいたわけではなかったので」。むしろ願いは長く一線で活躍すること。
「1年でも多くシードを守って欲しい。それが一番強欲なのかもしれませんが」と言って笑った。「ホっとしました。2年のシード権が嬉しいです」と、胸を押さえた。

11歳になる長男の天祐(てんゆう)くん。前回の優勝は2002年。当時2歳と2ヶ月は、物心ついてからの初Vにも「多分、カッコ良かった」と微妙な表現も致し方ない。
大ギャラリーに紛れて、父親の18ホールについて歩いた。「3番のイーグルはドキドキした」。しかし、そんな最高の場面でさえも、「父はずっとうなだれていた」。
毎ホールでスイングに悩み続ける姿を目の当たりにして、いつも母親が言う「プロゴルファーは勧めない」という真意を、ほんの少し理解した。

そして長女の真帆ちゃんは、おしゃまな6歳。この夏休みの課題で絵本を手作り。イルカにキスをしたら、願いごとがかなうというストーリーだ。「お父さんが優勝出来ますように」。最後は、その夢をかなえてくれたイルカに、家族みんなでお礼に行く。

感動の物語に父は涙をこぼしながら謝った。
「ゴメン、真帆。実現したいけど今は無理」。
そして今朝はスタート前に、家族全員の目に止まったのは優勝副賞のキヤノン製品一式。特に天祐くんには「ビデオカメラが欲しい」とねだられた。「学校のスキー合宿に持って行きたい!」。
「今日もらうのは無理だけど。今週なんとか稼いだお金で買ってあげる」と、約束して出ていった。趣味の欄に「子育て」と書くほど子煩悩な父親は、それぞれの願いをたった1日でいっぺんに叶えてしまった。

「これで来週は、ちょっとゆっくり休める」。
次週はゴルファー日本一決定戦。「日本オープン」には前週まで権利がなく、久しぶりの空いた1週間を利用して、家族旅行の計画を立てていた。だが今回の優勝で、土壇場の出場権を得たと聞いても「またまたぁ」と、にわかには信じられない。
「ほんとうに?! じゃあキャンセルしなきゃ」と、せっかくの旅行の中止は残念だが、嬉しい誤算はいつも一番の声援をくれる仲良し家族もきっと納得してくれるはずだ。
  • お母さんも加わって改めて家族の抱擁
  • 感動の記念撮影!!
  • 優勝賞金3000万円と同じくらい嬉しかったのが、副賞の「キヤノン製品一式」に家族も大喜び

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