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ANAオープンゴルフトーナメント 2011

カート・バーンズが日本ツアー初優勝

今週、バッグを担いでくれたサイモンさんは、選手たちが使うヤーデージブック「サイモン・メモ」を作っている“スペシャリスト”。「サイモンのおかげで勝てた」と感謝!
最後はラフからラフを渡り歩いてボギーでの、ウィニングパットはご愛敬だが2打差で迎えた18番だ。3つで乗せれられれば何の問題もない。遮るものもない。しとしとと、1日中降り続いた秋雨も、飛ばし屋にはむしろ味方になった。

ドライビングディスタンスで今季平均296.94ヤードを記録して、ランクは4位。ねっとりと湿った芝も、うっそうとした輪厚の高い森も、どこまでも楽々と超えていく。

行けるところまで目一杯飛ばしたら、短いクラブでちょん、と寄せれば良いだけだ。
「今日は距離が出ない」と苦しむ16歳を横目に、余裕しゃくしゃくと逃げ切った。
身長183センチと体重98㌔の巨漢で立ちはだかった。最終日は、一緒に首位でスタートした伊藤誠道くんの史上2人目の高校生Vを阻止した。

「今日はここにいるみなさんが、伊藤くんに注目していたと思うのですが」と、その点では申し訳ない。「でも、今日は勝ててほんとに嬉しい!」。
参戦2年目の日本ツアーで得た初Vだ。

高校生の快挙に集まってしまいがちな視線は、せめてど派手なウェアで引き寄せた。母国の国旗をあしらった斬新なデザインは、自慢の勝負パンツだ。
5月のワンアジアツアー「SKテレコムオープン」の最終日にも、このコスチュームで勝利を飾った。「これからは、日曜日に毎回この服を着る」と、この1勝で、いっそうゲンの良い一着になった。

この日は、スタートの選手コールでアナウンサーの宮本武蔵さんに聞かれた。「“ファンキーゴルファー”と“ファンキーファッションリーダー”って呼ばれるの。どっちがいい?」。
「ファッションリーダー」と、即答した。「ついでに“ジョン・デーリー二世”も付け足してくれないかな」と、懇願した。
憧れのその人は「人柄も、ゴルフも大好きなんです」と、同じウェアメーカーと契約を結ぶほどの心酔ぶり。「それは少し長くなってしまうから」と、宮本さんには却下されたが、たとえそのセリフがなくとも奇抜な風貌に、米ツアーの元祖飛ばし屋を重ねた人は多かったはず。特に最後に両腕を高く突き上げたガッツポーズは、彷彿とさせるに十分だった。

2歳で初めてクラブを握り、15歳から本格的にゴルフを始めた。2002年に豪州アマやニュージーランドアマなど、いくつかのタイトルを獲って自信がついた。
「スポーツでお金を稼ぎたい」と、23歳でプロ入りを決意した。
その後、アジアンツアーやアメリカのミニツアーで腕を磨いたが、「日本は素晴らしいコースが多いと聞いたし、家からも近い」と、約8時間の航路も足取り軽く来日した。

2009年に出場優先順位を決めるクォリファイングトーナメント(QT)を初受験。昨年は、“デビュー年”のシード入りには失敗したが、今季は出場わずか6試合ながら、2度のトップ10入りに「今年は勝てそうな予感があった」と、戦う前から自信もあった。

雨中の大混戦を制して、婚約中のケーシーさんにも嬉しい報告が出来る。
挙式は未定だったが、資金が出来れば日程も現実味を帯びてくる。「来年にはしようかな。家も買います」。賞金2200万円の使い道もおのずと決まった。
  • 祝福に駆けつけてくれたのは同じ豪州のブレンダン・ジョーンズ。来日を勧めてくれたのも彼で「日本は素晴らしいツアーだよって聞いたからね」。

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