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ダンロップフェニックス 2010

鈴木亨が2位タイ浮上

鈴木が通算7アンダーでホールアウトした直後に、池田勇太が15番に続いて、17番でもボギーを打って、差が少し縮まった。

にわかに降ってわいた、ツアー通算9勝目のチャンス到来に、44歳が目を剥いた。
「ここに来るまで、そんなことはまったく頭になかったのに!!」。

13番、14番で2メートルもないチャンスを外し、18番でも絶好のバーディトライがカップをそれて、「もったいないパー」と、悔しがったがそれでもボギーなしのラウンドには、「僕の歴史上では記憶になかったこと。それくらい、良いゴルフが出来た」と、本人も驚くばかりだ。

18年連続出場の今大会で、会見場に呼ばれたのも初めてといい、「こんなに立派な部屋なんですね」と、重ねて目を丸くする。

毎年、たくさんの海外の招待選手が来日して華を添える国際色豊かなこのビッグイベントは、インタビュールームも広々と、大会ロゴ入りの巨大なバックボードの前にはポインセチアや季節の花々が飾られて、豪華絢爛。

おまけに深々としたソファは記者より一段、高く見下ろす位置に、ちょっぴり居心地悪そうに腰かけて、思いを語った。

「この大会は、上位に入れば世界の実力プレーヤーと、いい緊張感の中でプレーする楽しみが毎年あった。賞金も高いですし、コースもグレードも難易度も高い。すべてにおいて、最上級に近い試合。その中で戦えているというのは、僕の中でひとつの幸せです」。

もっとも、初日の段階ではとても、そんな心境にはなれなかった。5番ホールで「ボールが木になった」。そして、ロストボールのトリプルボギーは、今年初めてではなかった。

先月10月のキヤノンオープンでも、初日から2日連続で、「ボールが木になった」。その週、再び予選落ちを喫し「これで悪いものは、全部出しただろう」と良い方に考えて、吹っ切ろうとしていたのに。
この土壇場に来て、またまた不運に「本当に今年はやることなすこと全部ダメで。厄年はもう終わったのに」と絶望的に。

そんなとき、何より支えになったのが、プロのプライドだ。
現在、賞金シードを持つ選手の中で、昨年まで17年連続のシード権の保持は、最長記録でもある。

今年は、それが途切れるかもしれないという危機を味わっている。
現在、約1100万円の68位はいまだ微妙な位置と言わざるをえず、「ここで、諦めるわけにはいかない」との思いが、週末の優勝争いにまで、鈴木を押し上げてきたのは間違いない。

正念場を迎えるマイホームパパには、アイドル歌手として活躍中の長女・愛理さんの励ましが何よりのクスリだ。
「娘は僕と正反対で、すごくポジティブ。娘のほかにも、心配してくれている人は、たくさんいるから。応援をパワーに変えて、やりきりたい」。
ベテランが経験とプライドをかけて、24歳のリーダーを懸命に追いかけていく。

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